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新しい通信技術は、規模の大小にかかわらず、ほとんどの企業にとっての競争のゲームを変えてしまう力をもっている。すでにテレコミュニケーションを使って競争優位性を獲得している企業も多いが、しかし、こうした新しい可能性を自社の戦略計画にどう生かせばよいのか、つかみきれていない企業もまた多くある。
AT&T社の分割およびローカル通信、遠距離通信両方での通信の再編成を、テレコミュニケーション費用の削減の機会ととらえた企業もあるが、それは新しい通信体制を魅力あるものにする結果となっている。このような新しい環境下において、企業は自らの進むべき道を探索し始めている。ある企業は、顧客との間に電子通信網を構築し、また別の企業は納入業者との間でネットワークを結んでいる(1)。このような新しい関係によって、市場における企業のポジションと市場そのものが変化する可能性があり、ときには新製品市場が創造される可能性さえある(2)。
コストが相対的に低く、魅力的な機会があるにもかかわらず、テレコム(関係者は手短にこう呼んでいる)の新しい可能性を活用しようとする動きが少ないのは、なぜであろうか。この可能性の範囲があまりに大きすぎてとまどってしまうということが、けっして小さくはない問題の1つである。最善の設備を得るためにはどこにいけばよいのか、その設備の信頼性を確保するためにはどうすればよいのか、無数に提供されているハードウェアやソフトウェアのなかから、どのような種類のものを選べばよいのか、こうした問題がマネジャーの直面する困難な問題には含まれている。さらに、こうした点での選択は、技術的な問題を考慮して決定されるのであり、技術担当マネジャーとゼネラル・マネジャーとの間で現在以上の理解が得られるかどうかによって左右される。
しかし、こうした現実的な問題に答えを出すまえに、自社にとってテレコミュニケーションが、どのような役に立つのかをはっきりさせておくことが先決である。最善の利用可能性を見出すことは単純な問題ではない。そこで、われわれは、いくつかの企業がすでに実行していることを研究することによって、マネジャーにとっての教訓を導きだすことにしたいと思う。さまざまなタイプの企業に多様な利用可能性のなかから最善の示唆を与えるために、考えられる利用のしかたを幅広く提示する。
企業の経験
ある大手の国際銀行は、もっとも有効と思われる方法で、新しいテレコミュニケーション技術の利用のしかたを工夫した。この銀行は、ヨーロッパにある大手の顧客の財務担当役員の机のうえにそれぞれターミナルを設置して、米国の部品供給業者の口座に直接振り込めるようにしている。ハードウェア、ソフトウェア、通信ネットワークはすべて、銀行側が提供している。このシステムによって得られるスピードと管理能力に、顧客は非常な満足を示している。しかし最大の勝利者は銀行である。こうしたサービスを提供することによってマーケティング上の大成功を収めただけではなく、データ入力費用とデータ入力エラーの責任を顧客に転嫁してしまったからである。
この例は、テレコム利用の興味のある例である。銀行の顧客は満足を得ているし、銀行は費用と責任を小さくした。しかし、もっとも重要なことは、顧客にとってのきわめて大きな転換コストを銀行がつくりだしたことであろう。なぜなら、顧客がこの銀行のネットワークを離脱し、別の銀行のシステムで最初からやり直し、習熟するためには、長い時間を必要とするはずだからである。そのうえ、顧客が使う新しいサービスと新しいデータベースが積み重なっていくにつれて、この転換コストは大きくなっていくのである。
テレコム利用の別のタイプの場合には、企業は自社の提供物の複写や複製を不可能にしている。例えば、ほとんどの大手航空会社は、ある種の常連客特別サービス計画をもっており、したがって、どの航空会社が特別強い優位性をもっているかは明らかではない。しかし顧客が第2、第3の参入者を無視するような利用のしかた――例えば、ある病院が1つの納入業者にリンクされている病院用購買ターミナルや1つの航空会社によって運用されている座席予約システム――があれば、第1の開発者が得られる期待利益は、きわめて大きなものとなる。
現在では規制が緩和されており、こうした環境下では、旅行代理店との間に結んだ電子通信網による迅速なフィードバック情報は、航空会社にとって大きな利点となっている。航空会社はこうした情報を、自社の輸送サービスの価格決定やマーケティングに活用したり、不採算路線の放棄や支線と幹線の組合わせなど、路線体系を迅速に調整することに活用している。
保険会社は、銀行規制の変化による競争環境の変化を見越して、これまでよりはるかにうまく行動している。これら保険会社は、代理店との間に通信ネットワークを構築して、顧客サービスの改善はもちろん、新商品の導入も進めている。
サービスおよび商品の強化
自社の製品ラインの価値を高めるためにテレコム利用の方法を探索している企業にとっては、他社の事例からとるべき道についての示唆を得ることができる。



