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米国政府の政策立案者は、この20年間に世界市場において米国の産業競争力が低下してきている点に大きな懸念を抱いている。そのほんの1例をあげると、化学、機械、自動車のような主要産業をはじめとした世界の商品輸出に占める米国の比率は、1955年の16.5%から1975年の12.2%へ、そして1984年にはさらに低い11.1%へと低下してきている(1)。こうした傾向は、明らかに世界市場において消費者だけではなく、生産者も非常に増えてきていることによる。こうした新しい不測事象のなかでも特にめだつ事象は、日本と新興工業国――主として韓国、台湾、香港、メキシコ、ブラジル、インド――の台頭である。やがて中国も、こうした国に加わることになるであろう。
過去40年間にわたって、米系多国籍企業の発展を助長してきた通信・運輸面での技術革新は、こうした新しい国々の台頭の一因となってきた。その技術革新は、諸外国からの情報の吸収と遠隔地間での商品・人材の移転に際し、これらの国々が要する費用を大幅に削減させた。ひとたび情報と運輸面での障壁が克服されると、こうした国の競争優位性はまず賃金構造の変化にみられたように、製造活動に有利に作用した。
米国の製造業の競争力の低下の原因を探求しようとすれば、錯綜する相対立する分析、説明、議論に直面する。これに関連して、2、3の事例を簡単に紹介しよう。
多数の米国の研究者によれば、この20~30年間の米国産業の低落の原因は、米国政府が特恵産業に対して膨大な支援を行なう時に、多数の海外諸国を模倣する意思や能力をもっていなかった点にある(2)。これに対応して、海外の研究者の主張によれば、米国政府が援助する研究開発計画の規模に比べて、他の国々の企業に対する援助額は非常に少ないものであった。1983年には、こうした目的に対する米国政府の支出額は、日本、フランス、西ドイツ、イギリスの国家の研究開発支出額をかなり上まわっていた(3)。また、専門家によれば、米国政府は過去約10年間で欧州・日本政府の輸入規制に匹敵するか、それを超えるほどの輸入規制を行なってきている。
1981年の時点で、米国の国内市場に占める工業製品の輸入比率は、高い非関税障壁の影響を受けながらも、日本をはじめとする他の6ヵ国のそれよりも高い比率となった(4)。
筆者の見解では、米国が直面しているこうした新しい競争の大半は、ほとんど避けられなかったのである。特に日本、韓国、ブラジルといった国は、外国企業が専門的な技能と科学技術情報を獲得する際に必要とする費用を大幅に低減して得られる機会を、その他の国よりもいっそう巧みに開拓してきた。しかし、特にかなり成熟化した製品ラインのグローバルな競争の激化は避けることができなかった。
米国の製造業界の世界市場に占める比率が低下している理由は、米国政府が特恵産業に支援したがらない、という要因以外の要因にもある、と主張する研究者もいる。米国企業の経営幹部は、競争力のある製品を生産したいという願望とその能力の両者をなくしている、というのが彼らに共通した論点である。しかし、ここで想起しなければならないことは、1950年代と1960年代の大半を通じて、利益への高い関心と環境変化への迅速な対応をはじめとする米国人の企業家精神という特殊な能力を、研究者たちが称賛していた点である(5)。しかし、その10年後には、他の研究者たちは米国企業の低落の原因をそれと同様の特徴のせいにした(6)。しかし、このように、研究者の考えが短期間に変わるのは、その信憑性に疑いがある、ということである。
そのうえ、海外関連会社を含めた米系多国籍企業のグローバルな状況は、経営業績に関して、米国の国内だけの生産高のデータが示すのとは違った印象を与えている。もし米系多国籍企業のグローバルな輸出高を1つの指標として採用すれば、1966年から1982年の期間では、米系多国籍企業は海外の輸出業者に引けをとっていないのである(7)。
こうした主張よりいっそう重大な主張は、米国の経営実践――フォード社の組立てラインと1920年代の時間・動作研究に代表される――は、現在では陳腐化し、日本などが活用している柔軟な経営手段に大きく後れをとってしまった、ということである。多数の実証研究が示しているように、日本の環境に存在した一定の要因が、日本経済のいくつかの産業の著しく高い生産性の一因となってきた(8)。
しかし、その分析には次のような課題がある。日本の高い生産性の主要な要因は何か。それは日本の労働者の高い教育水準によるのか。大企業の終身雇用制度によるのか。経営管理者の補充・昇進制度によるのか。景気の調節弁のような役割を果たす下請け業者の広範な活用によるのか。大企業と民間銀行および政府の信用仲介機関との財務的な結びつきによるのか。それとも以上のような要因の組合わせによるのか。



