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どれほど万能の世の中になっても、マーケターだけは、次々にすぐれた製品と、なるほどと思えるようなマーケティング計画を作り出さなければならないし、それによってこそ世界的な勝利を得ることができる。だが、経済性と効率を高めるには、標準化された製品と計画の必要なことが明らかであるにもかかわらず、マネジャーの多くは、よくいわれるように、グローバル・マーケティングは極端すぎて、実行しにくいのではないかという不安を抱いている。顧客や競争の条件が国によって違うから、あるいは力の強いローカル・マネジャーが集中化された意思決定を支持しないからという理由で、グローバル・マーケティングはうまくいかないと、マネジャーの多くは主張するのである。
グローバル・マーケティングにも、むろん、それなりの危険はある。しかしまた、すばらしく大きな利益がもたらされることも事実なのである。製品を標準化することによって、操業費は低下する。しかし、もっと重要なことは、効果的な調整が行なわれると、その会社にとって最良の製品とマーケティングのアイデアが生まれるということである。
よくあることだが、経営幹部はグローバル・マーケティングを、完全な標準化かローカル別の管理かという二者択一問題としてとらえがちだ。だが、世界的な戦略が、計画の細部にわたる全世界的なきびしい調整から、製品アイデアに関するゆるやかな同意に至るまでのスペクトル上のどこかに位置づけられるものだとしたら、どうしてそんな極端な見方をする必要があるだろうか。グローバル・マーケティングの考え方を適用し、それを生かすには、柔軟さが必要である。マネジャーは用いようとする手法を、ビジネス・システムとマーケティング計画のそれぞれの要素に合わせなければならない。例えば、メーカーならば、同一製品を他の国では別のブランドで売らなければならない場合もあるし、あるいは成分を変えて同じブランド品を販売しなければならないこともある。
今日の大きな問題は、グローバル・マーケティングをやるべきかどうかではなくて、その考え方をいかに各ビジネスに当てはめ、それを生かすかということであろう。本稿において、われわれはまず、マネジャーが事業を世界的規模に拡大する場合、マーケティング機能のさまざまな分野を組み立てるための枠組みを提供しようと思う。ついで、われわれの研究した企業が、グローバル・マーケティングの実施という課題に、どのように挑戦しているかを示したいと思う。
どこまでやるべきか
企業がグローバル・マーケティングにどこまで深入りできるかは、その会社の発展度と伝統のいかんによるだろう。次に2つの例をあげる。
□ コカ・コーラ・カンパニーは、1940年以前にも、いくらかは国際的な事業を行なっていたが、本当は世界中で知られるようになったのは、第二次大戦中、米軍の行進とともにコークのボトリング工場が全世界へ進出したときである。アトランタにいる経営陣が、当時すべての戦略決定を下していた。それは現在もひきつがれていて、例えば低カロリーのコークを世界中に広めたとき、グローバル・マーケティングの原理を適用したのも、その表われである。ブランド名、濃縮液の処方、製品の位置づけ、広告のテーマは、事実上世界中で一本化されているが、人工甘味料とパッケージ政策だけは、国によって異なっている。ローカル・マネジャーは、販売・流通の計画の責任を負っており、ローカル・ボトラーと共同で、この計画を実施している。
□ ネッスル社の戦略もまた、その歴史にもとづいている。ヨーロッパの戦争による流通の混乱を避けながら、急速に世界的な規模に事業を拡大できるように、またローカルの消費者ニーズに対応するため、ネッスル社は当初からローカル・マネジャーにかなりの自主性を認めてきた。ローカル・マネジャーは今日でもなお、多くの意思決定権を握っているが、それにもかかわらずべベイにあるネッスルの本社は、ますます重要になった。ローカルのネッスル製品販売で成功をおさめ、標準化された製品とマーケティングのアイデアを自国の経営幹部に受けいれさせるうえで影響力の大きい、かつてのローカル・マネジャーの多くを、ネッスル社は本社のマーケティング・スタッフとして送りこんできた。その結果、マーケティングにおける調整は、いっそう強化される傾向にあるようだ。
コカ・コーラ社はグローバル・マーケティングの企業で、ネッスル社はそうではないという結論を下すとしたら、あまりに単純すぎよう。われわれは図1によって、両社の経営の各機能、製品、マーケティング・ミックス要因、国の別に、計画の適応度ないし標準化のレベルを評価した。個々のアプローチにおいては両社ともに必要な調整を行なっている。また図1によって示すことはできないが、状況はけっして静的ではない。読者はそれぞれに、この4つの次元について自社の計画適応度ないしは標準化のレベルの現状と望ましい水準を評価されるがよい。2つのレベルの間の格差が実施面での課題となる。格差がどれほど大きいか――そして、それをどれほど急いで埋めなければならないか――は、会社の戦略および財務活動の成果、競争の激しさ、技術の変化、消費者の価値観の集中度のいかんによるだろう。
グローバル・マーケティングの4つの次元
では、適当な標準化ないし適応の水準という見地から、経営幹部が図1に示された4つの次元を考えるときに生ずる問題について検討してみよう。
経営の各機能 企業のグローバル・マーケティングに対する取組み方は、第1に全般的な戦略によって決まる。多くの多国籍企業では、計画面において機能のうちのあるものが、他を引き離して標準化されることが多い。例えば、製造、財務、研究開発は本社で統轄されることが多い反面、マーケティング上の意思決定はローカル・マネジャーによって行なわれる。マーケティングは、ふつうもっとも集中管理しにくい機能の1つである。製品の品質や財務データは、マーケティングの効率よりも測定しやすいという事情もあって、製造と財務は標準化の度合いが大きい。



