ジャスト・イン・タイム生産もしくはJIT(訳注)は、他の新しい生産手法のどれよりも短期間により多くの注目を集めている。このような注目を集めた主たる理由は、JITが日本の製造業の成功の大きな要因となっているからだといえよう。

 非常に多くの紹介記事・出版物により、多くの関心が示されたにもかかわらず、工場にJITを導入している会社は少ない。もしJITが工場の必要とするすべてのメリットを満たすのであれば、なにゆえJITの導入が、そんなに少ないのだろうか。

 JITの広範な紹介は、よしあしであるといえる。よく読まれている記事のみでなく技術記事ですら、従来のバッチ生産と一見してわかる差異のみに注目し、JITのもつより重要な、しかし見えにくい部分を見逃している。それら記者は、JITを在庫コストの削減の手法以上のものとしてとらえることはまれで、この手法が全生産体系の改善を可能にするものであることについて、ほとんど触れていない。JITをほんのちょっと読んだだけでは、それがどんなに役立つかを理解することは困難である。というのも、ほとんどの記事はつまるところ、JITが企業の投資収益率を向上するということに視点を当てているからである。

 在庫削減をはかり投資収益率の向上をはかる以上に重要な点は、低量在庫水準下の工場運営からもたらされる生産体制の改善である。JITは大量在庫による安全カバーを除去し、運営上の問題点を表面化させる。そのような問題は表面化させ解決されなければならないものである。そこではじめてJITが克服すべき問題点を明らかにすることができるのである。

 JITへ移行することは大変革を意味する。その大変革は、生産体制のみでなく企業風土、文化そのものに及ぶものである。旧来の手続やルールは不適切なものとなる。安全在庫は従来、不意の部品不足や遅れの保険と考えられていたが、いまや不十分な計画および管理、時には怠惰さの証拠とすらみなされることになる。大ロット生産は段取費用を逓減させるからという理由でメリットがあるという考えは、もはや通用しない。JITは長い段取時間に帰因するむだを除去していくからである。

 製造工程もしくはそこにおける創造性という観点からみて、きわめて柔軟性にとんでいるという製造組織はほとんどない。典型的な製造企業は巨大な船のようなものである。そこにおいては進路の急変更は非常に困難である。ほとんどの工場は何年もの間、同じ工程を経て、同様の製品を生産してきた。そこにおける管理者というものは、わかっている環境下でのみ安定を感じるものである。このような環境においては、変化は非常にゆっくりとしかおきない。経営者のJITに対する誤解とこのような硬直性はJITの導入をさまたげている。経営者のなかには、「JITが他の工場で、すばらしい効果を発揮したことは知っているが、われわれの工場、製造工程、従業員は、それとは異なる。われわれの状況下ではJITは、うまくいかない」と、いいわけをするものが多い。

 誤解が、この価値ある管理手法の導入をさまたげている点にかんがみ、まずその点を見てみることにしたい。

原材料 部品業者の問題点

 いいわけ1:「原材・部品を小ロットで毎日納入しなければならないJITに、われわれの原材・部品業者はついてこない」。

 原材・部品業者に日納入を要求するのは、JITを在庫削減の手段とのみ見る管理者の共通した誤りである。最終的には、在庫の削減は正しいことであるが、スタート時点においては正しいとは、いえない。もしJITを在庫削減より問題改善の手法としてとらえるなら、適切な導入開始点は、そこでないことは明らかである。JITは、密接な協調を必要とする外部からスタートするより、問題点を管理しやすい工場内部で採用・活用されるべきである。企業内でJITに習熟しはじめた後、原材・部品業者にJITが業者自身にとっても利益をもたらすことを理解させるべきであろう。

 さらにJITは"引っぱり"システムであるので、各工程は、次工程を充足する量だけ生産する。――それに対し、旧来のロットで押し型のシステムでは部品は大ロットで作られ、次工程に固定的スケジュールにもとづき押し出されていく。JITにおいては、工場のすべての活動および納入業者に対するすべての需要は、最終製品組立工程から起動されることとなる。最終組立工程は、生産全体の管理ポイントであり、そこがJITの導入開始点となる。