競争圧力が高まるとともに、生産設備・工場を自動化して労働コストを削減し、品質を向上させることが緊急の課題になってきている。マネジャーは、新技術を重視しているが、新技術で最大の成果を期待できるのはロボットである。しかし、この革命的な力を秘めている(この点では誤解されていることが多いが)機械を効率的に動かすことは、簡単なことではない。

 新しい生産技術を使おうとするとき、最初はどの技術でも、今よりは、よい方法で仕事をすることができるようにみえる。マネジャーが、この技術には独自の必要条件と可能性があることを学び、自分自身の仕事に深いかかわりがあることに気がつくためには、ただ時間と経験が必要である。ロボット技術はある種のブルーカラーの仕事を奪い、一方では別の種類の仕事を生み出す。それはまた、製品設計・工程設計のホワイトカラーの仕事にも深く影響を及ぼす。それは、長い間に確立された生産組織と生産方法に、構造的な変化をもたらす。

 どうすれば、われわれは、ロボット技術の正しい見通しを描くことができるだろうか。ロボット技術の特性をどう考えれば、ロボット技術活用の最善の方法を知ることができるだろうか。どうすれば、ロボット技術についての経験を、他の先端技術の理解に生かすことができるだろうか。

 ロボットは人間に代替するものと考えられており、したがって、ロボットはまさに機械人間であるという仮説が簡単に生まれる。しかし、仕事と製品の設計は、人間の強さと弱さについての多くの隠された前提――と制約――のうえに行なわれている。ところがロボットは、ロボット独自の――そして、まるで別の――強さと弱さをもった機械である。このことは、ロボットが機械人間ではないこと、そして1つの統合された生産システムの部分であることを意味する。ロボットはまた、今のままの製品をつくる今のままの工場で人間を効果的に補完することはできない。このようなロボットの使い方は、人間が機械と同じようになろうとして長い間、空しい努力を続けてきた非効率的なやり方を生きながらえさせるだけである。

 人びとが現実にどのようにして自分の仕事をこなしているのか、またその能力にどの程度のバラつきがあるのかについて、われわれにわかっていることはあまりに少ない。2つの部品を組み合わせたり、表面を検査したり、ネジを締めたりするときのやり方は、実際には非常に複雑である。さらに、われわれは、自動化を成功させるには、その設計にどのような技術的仕様が必要であるかを記述しうるほどには、多くの仕事の原理を理解していない。

 したがって、人間のやり方を模倣して自動化しようとする要求を満足させることは、不可能である。それは間違った方法でもある。さらに悪いことには、こうした方法をとると、工場や製品を改善するためのスプリングボードとして新しい技術を使う機会を逃すことになる。

人間はなんとすばらしい作品だ

 われわれは、この分野での15年間の研究とコンサルティングの経験から、ロボットを擬人化すること――すなわちロボットを、人間能力をそっくり再生するものとして考えること――は、非生産的であると確信するに至った。なぜ、何百万ドルもの投資をしてロボットを設備し、仕事をこなしているとみえる人とおき換えようとするのだろうか。人がそうしているからといって、一度に1つずつの仕事を順次処理していくような工程を、どうして設計するのだろうか。

 こうした考え方は、依然として根強い。なぜなのか。概略的にいえば、人間の身体と心は、設計やエンジニアリング、一般的な能力の点において究極的なものであるという信仰があるからである。骨を軽く強くしたり、眼を鋭敏にしたり、あるいは脳を強化する方法は、誰も知らない。なぜ、人間をモデルにして、ロボットの開発の方向づけをしないのであろうか。また、ロボットが人間に似てくれば、自動化工場は真にフレキシブルなものになりえるだろう。人びとが、自分の仕事をするために、たくさんの高価な治具を必要としていなければ、ロボットもまた、そうした治具を必要とするはずがない。

 この考え方は、マネジャーに、要領よく完全無欠な方法で工場の問題を解決できるという幻想を抱かせるがゆえに、根強い。問題の多い製品を設計変更したり、購買システムを合理化したりする必要はないのだ。製造工程を考え直す必要もない。必要なことは、手を別の種類の手におき換えることだけである。

 詳細に検討すれば、こうした議論の弱点が明らかになる。初期の研究者の考え方によれば、ロボットは、まったく構造化が行なわれていない環境に直面しても正しく機能を発揮するものとされていた。例えば一連の部品がテーブルに雑然とおかれていても、1つひとつの部品を正しく認識して、順序正しくとりあげ、組み立てることができるのであり、基本的には、人間が模型飛行機を組み立てるのと、まったく同じことなのである。したがって当然のことながら、ロボットは、複数の指のある手と、立体視覚システム、山積みされた部品を認識する能力、両腕で作業する能力などをもたなければならなかった。