ある小さな化学製品販売会社の社長が、化学製品の大メーカーに電話して、大事なお客のために特定の化学製品を急いで配送してほしいと依頼したことがある。ところが、このメーカーの社内営業マンは、その社長を知らなかったので、信用のチェックが先決だと伝えたのである。「わが社はそこと50年以上も取引しているというのに、奴らはわしの名前さえ知らず、わが社の信用の歴史も、この種の注文がうちの業務にとって、どれほど大切なのかもわかっていない」。のちになって、この販売業者はこう慨嘆した。「奴らはそのくせ、うちの販売員がその会社の化学製品を売るのに全力を尽くさないのは、どうしてだろうというのだからな」。

 あるファスナーの大メーカーにいるベテランの流通担当販売マネジャーが、生産財販売会社の1つを訪ねたら、ちょうど新しい社長に交代したところであった。「また、これだ」と、販売マネジャーは呟いた。過去5年間に、同社関係販売会社の主な所有者のうち、半分近くが会社を譲渡したり、死亡ないしは引退しているのだった。「販売会社の経営者が代わるたびに、また新規まき直しも同然なのです」とこのマネジャーはいうのだった。「わたしは、もう何年もの間、6ヵ月に一度はこの社長の親父を訪問して事業の成行きを見守ってきたのです。競争相手に負けずに値引きをすること、いつも在庫を十分にしておくこと、そしてときにセールス・インセンティブ計画を実施すること、これがその親父の協力を得るために、われわれがやらなければならなかったことの一切でした。ところが息子のほうは、その会社の投資収益を高めるため、当社は何をすべきか、新市場を開拓するための援助計画を当社がどのように立てたらよいか、彼の会社はどんなコンピュータ用ソフトウェアを使うべきなのかを承知しているといって聞かないのですよ。われわれは、販売業者との接触を失おうとしているんですかね」。

 ある套管(ブッシング)メーカーの販売担当が、年内初めて販売業者の1つを訪問した。販売担当のいちばんの関心は、この販売業者における同社製品の売上げが、どうして当期は横ばいに終わったのか、その原因を知ることにあった。この販売業者には、販促効果の"実証された"各種の新しい高価な販促資材が渡してあったので、この疑問はなおさら苛立たしいものだったのである。販売担当は、この資材が使われないまま、倉庫の片隅に積み上げられていることに気づいた。この点について尋ねると、それはとても手がこんでいて、取扱いにくいからだというのが、販売業者の答えだった。そして、それよりも問題なのは、だれ1人会社からやってきて、その使い方を実演してくれなかったことだと、この販売業者が答えたことだった。

 こうした状況から考えると、メーカーが生産財販売業者のための計画を立てて実施する場合、効果をあげるためには、次のような条件が必要だと思われる。

販売業者のニーズを心から理解すること
流通業者との強い協力関係を築くこと
この協力関係を積極的に管理すること

 アメリカ経済において生産財販売業者の役割が増大しているので、多くのメーカーにとって、有効な協力関係を築くことが極めて重要になっている。全卸売り業者の1982年における売上高は、1兆1000億ドルを上まわった。この総額のうち、200億ドルは、主に保守・修理ならびに運転用資材関係の顧客への販売によるものであり、他の3140億ドルは、製品の大半を生産企業および販売企業の両方、あるいはそのどちらかへ販売している、その他各種の流通業者によるものである(1)。

 アーサー・アンダーセン・アンド・カンパニーの最近の研究によれば、卸売り業者販売額は、今後10年間、実質で経済成長率よりも高い率で伸びることが期待されるという(2)。

 また、最近のマグローヒル社の調査が明らかにしたところでは、製品を直接末端ユーザーだけに販売している生産財企業は、全体のわずか24%にすぎず、残り76%は何らかの仲介業者を利用している。そしてそのなかで、生産財販売業者が最も突出しているという(3)。