以下の4人のビジネスマンが米国と日本のジョイント・ベンチャー(以下、JV)について、どうしてもいわざるをえない点に耳を傾けていただきたい。

「彼らはガラス、タイヤ、スティールなどエネルギー集約型の部品は、ここで買ってくれる。しかし労働集約型の製品となると、いまだに日本の天下である」(テレンス J. ミラー、自動車部品アクセサリー協会職員)

「これまでビジネスの相手としてきた連中は、もうだめだ。とにかく競争力を備えていないからだ。今ではシカゴの町にあるサプライヤーから部品を買うのではなくて、大阪の町のサプライヤーから買うことにしている」(ロバート W. ガルビン、モトローラ社会長)

「クロス&トレッカーは工作機械の仕事に専念しているが、ここで販売している工作機械あるいはそのある部分については、もはや米国での製造に専念しているわけではない」(リチャード T. リンドグレン、クロス&トレッカー社長)

「とりあえず、産業部品を極東に移してみる。すると、製品の開発がそこで進み、結果的に海外のサプライヤーに支払った1ドルのうちの10セントは、まるでライバルになる新しい装置や新しいコンセプトを開発してもらうために、あげているようなものとなる」(C. J. バン・ディアー・クルット、フィリップスN. V. 副会長)

 以上の4人のビジネスマンは、それぞれ米国の対日貿易関係を再編成し、国際的競合関係の新しいコンテクストを創造するトレンドの視点にたってコメントしている。簡単にいえば、次のような状況になっている。日本の企業は台頭する米国の保護主義的感情をそらすために、米国内にJVもしくは自社独自に工場を建設している。その一方で高品質、低コストの製品や部品を求めようとして、米国企業は日本の企業とのJV契約を進めつつある。同時に、米国企業は日本に対して新しい発明をライセンス供与しつつある(20ページの表はハイテク分野における最近の日米事業提携を紹介したものである)。

 表面的には、これらの契約は公正かつバランスのとれたもので、国際間における経済平衡現象が進んでいるかのようにみえる。しかし、詳細に調べてみると、こうした取引きの実態は、高給かつ高付加価値職種を日本にとどめ、同時に競争に打ち勝つために役立つプロジェクト・エンジニアリングおよび生産技術を入手しようとする日本側の、恒常的かつ暗黙的な戦略の一環であるということが明らかになってくる。

 対照的に、米国の戦略は危険なほど近視眼的である。低技能・低給与職のいくつか、およびライバルの高品質・低コスト製品に対して容易に接近することと引きかえに、わが国は自動車、工作機械、エレクトロニクス消費財および半導体といった現在の主力産業および将来の他の主力産業における競争力を、犠牲にしようとしているのは明らかである。

 このトレンドが抜き差しならぬ運命となってしまうまえに、米国ビジネス界および政府の首脳陣は慎重に事実を検討し、別のコースを選ぶべきかどうかを決断すべきである。とりわけ、2つの疑問が、この問題の要となっている。米国の将来の競争力にとって、どんな技術、能力が基盤となるべきか。そして現在の日本の投資とJV戦略が、これらの技術、能力にどのような影響を与えるか。

 先に引用した発言を考え、広範な産業界で行なわれている日米提携事例を調べてみると、これらの疑問に対する答えは、気分をいらだたせるものとなりそうである。これらの事業提携を通じて、日本の労働者たちは、しばしば応用技術、組立ておよび複合生産技術に関する有益な体験をしているのだが、これらは基礎研究、最終アセンブリー、マーケティング間に組み込まれている重要な段階を形成している。対照的に、米国の労働者は生産の2つの周辺段階に終始しているにすぎない。ひと握りの研究者が基礎研究に従事しており、他の多くの作業者はアセンブリー、マーケティングに関係している。