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企業家とて、その大半は他の一般の人と同様に、仕事面での浮き沈みあるいは会社の繁栄、失敗などに応じて、他の人びととのかかわりあいで人並みな困難を感じているのである。その一方で企業家の大半は現実社会に調和した内的視野を備えており、他の人びとが理解できるような行動を実社会で行なっているのである。
ところが一部の企業家にとっては、こうしたことがさほど容易ではない。彼らの場合、1つの夢を実現させるために必要なエネルギーが極めて高いために、その背後には様々な欲望、要求が渦巻いており、これらが、ひとたび解き放たれれば、1つの組織は壊滅状態になってしまうこともある。
例えば、企業家の細かいことに気くばりするという性格は、創業時においては1つの美徳となるが、かりに組織が成長した後に、このような支配意欲を発揮しようとすれば、それは企業の足をひっぱることになる。経営者の交代という事態に直面しても、なおこうした権力をすて去ることができない人間は、会社を成功させたいという欲望以上の何らかの、いいわけを生みださなければならなくなる。
本稿ではトップの座にありながら自分を見失ってしまった多くの企業家を研究し、取材を行なってきた著者が、こうした人びとが往々にしてとる共通の行動パターンと会社に対する影響内容を報告している。さらに企業家をねらっているベンチャー・キャピタリストや大企業首脳のために、企業家との共同作業がもたらすいくつかの落とし穴について説明すると同時に、逆に効果をあげる戦略を提案している。
ジョン・ホワイトはオフィス機器業界で著名な企業の最高経営責任者を務めているが、最近、小規模なエレクトロニクス部品会社を吸収すべきかどうかを考えている。その会社の製品が自社のオフィス機器製品ラインを効果的に強化するものであるだけに、ホワイトとしては、この問題を進めたい気持ちになっていた。吸収の可能性を検討するにあたってホワイトの心のなかには、そのエレクトロニクス会社の創業オーナーであるリー・トンプソンと、いくつかの問題について話しあわなければならぬという考えが刻み込まれていた。そのトンプソンは企業売り渡しの話合いのなかで会社を売った後も自分は、そのまま残るつもりであることを言明した。
ホワイトも、トンプソンがこの会社を見事に成功させたという功績は認めているが、連携を続けていくことが効果的であるかどうかについては迷っていた。トンプソンは親会社とうまく歩調を合わせられるか。トンプソンは従属的立場に妥協できるか。これまで自分のやり方でやってきたトンプソンがホワイトをボスと認め、その指示に従うことができるだろうか。
こうしたジョン・ホワイトの懸念は、けっして風変りなものではない。一部の企業家は他の会社の仕事の進め方を受け入れることが難しくて、妥協するのが極めて困難な仕事場の雰囲気を作りあげたりするものである。しかし、一般から見れば、こうした行動は集団の規範にかなったものとはとても思えない。とはいえ大半の企業家は社風の異なる会社とも、うまくやっていくだけの資質は備えているものである。
では企業家とは、どんな存在か。他のビジネスマンと違うところは何か。企業家を1つのグループとして眺めた場合、なかなか判断がつかぬ対象だが、彼らが備えている特性のなかには彼ら全体に共通するものもいくつかある。
一般的に企業家は達成意識が強いように見えるし、決断上の責任をとることが好きだし、さらに同じことを繰りかえすようなルーティン・ワークは、毛嫌いする。創造的な企業家はエネルギーのレベルも高く、忍耐および想像力は人並みはずれており、これにほどほどの計算されたリスクならば引き受けようとする意志が一体化して、初めは単純かつ間違ったアイデアに見えたプロジェクトを、具体的なビジネスに変貌させる能力を発揮することが少なくない。
企業家は同時に、1つの組織のなかに高度な熱意を伝播させる力をも持っている。また目的意識を相手に伝え、そうすることで周囲の者を活気的な世界にいると信じ込ませることもできる。人間的魅力、はったりあるいはカリスマとその要素は何であれ、とにかく企業家は組織を引っぱっていき、盛り上げるコツを呑み込んでいる。



