電話が発明されたとき、誰もがまず考えたことは、ビジネスマンにとって大いに役立つだろうということであった。このビジネス・ツールが、人びと――都会を遠く離れた農民から町の十代の若者たちに至るまで――の生活の仕方を変えてしまうことなど、誰ひとり想像することもなかった。技術革新は、多くの人が考える以上の影響をもたらすが、それはまたコンピュータについても同じである。

 多くのマネジャーは単に情報を蓄積し、伝送するための機械としてしか考えていないが、しかし長期的には、より深い意味を含んだ社会的な影響を持つ。コンピュータは階層構造を破壊し、規範や組織の境界を超越してしまう。したがってコンピュータを使うときには、人びとの行動は異なったものとなる。そして、いったん社会的意味づけが変化すると、組織そのものも変化する。

 こうした影響を考慮して、システムの設計に際しては、マネジャーは慎重でなければならないが、同時に、それによって自組織内に大きな社会的利点が生じることも考えねばならない。

 コンピュータはかつて、科学者や技術者の支配する領域であった。コンピュータが高性能化、多機能化し、安価になるとともに、今日では、科学者や技術者以外の多くの人もコンピュータを使っている。一般にコンピュータは、計算やデータ蓄積という特定目的に用いられる道具と認識されている。しかし、われわれが研究した組織体――企業や教育機関――では、コンピュータは、情報の収集と伝送や相互の対話のための多目的型の道具として使われているのが一般的である。コンピュータが共有の技術になるとともに、仕事の組織と仕事そのものに影響を及ぼし、マネジメントの領域にまで踏み込む。したがってマネジャーは、コンピュータが仕事場に与えるインパクトに関して多くの質問を発することになる。

・コンピュータ・ネットワークは、マネジャーの仕事を効率的にするか。

・ある組織にコンピュータ・メールを導入したとすれば、マネジャーが意思決定に要する時間は削減されるか。

・どのような種類のコンピュータ会議システムが、長期的視点に立ったマネジメントに適合するか。

・技術によってもたらされる変化のなかで、人びとが最も関心をもつものは何か。


 新しい技術の影響は、3段階で生じる。第1は、意図された技術効果である――すなわち効率の計画的な改善であり、これは新しい技術への投資を正当化する。第2は、一時的な効果である――これは、ある技術の導入によって生じる非常に重要な組織の調整過程であるが、最終的には消滅してしまうものである。第3は、意図しない社会的効果である――社会行動や仕事上の行動の組織の仕方における恒久的な変化である。明敏な管理者なら、第1のレベルで勝利し、第2のレベルでの損失を最少化し、第3のレベルでフレキシビリティーと選択の余地を残しておくような形で、技術についての意思決定を行なおうとするであろう。

 コンピュータは現代の最も優れた新しい技術であるが、過去の大きな社会的影響をもたらした技術革新、例えば電話やタイプライターなどと多くの共通点を持っている。われわれは、これらコンピュータ以外の技術革新の歴史から学ぶことができるし、また学ぶべきである。