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オフィスで見られるコンピュータ革命の姿は、多くの場合、ワードプロセッサが1台、デスクトップ型のPC Jr.やマッキントッシュが2~3台配置されているという光景に表わされている。工場に目を転じれば、塗装用ロボットや点溶接用ロボットが奇妙な動きをしながら単調な仕事をこなしていることであろう。これが、アメリカ産業界を覆いつくすと考えられていたオートメーション革命の、多くの企業における現実の姿である。いったい何が起きているのであろうか。
確かにコンピュータ革命は、あらゆる面で重大な転換点にさしかかっている。あまりに楽観的な予測に彩られたバラ色の姿は、より慎重で現実的な予測に道を譲っている。その背景には、ソフトウェアにバグ(障害、欠陥)が発生すること、ユーザーが自分の仕事に機械を適用するときにトラブルが生ずること、従業員の適応に苦痛が伴うことが明らかになったこと、景気の状況が企業の設備購入能力を減殺していることがある。
しかし、先を読む目をもつ経営者にとっては、コンピュータ革命の停滞状況は、漸進的かつより合理的に、そして結局は、より少ない懸念で大きな利益を得られる形で適応していくための、よい機会を与えてくれることになろう。
ホーム・コンピュータの販売は不振を続けている。コンピュータ・メーカーは、出すモデル出すモデルで失敗し、販売を中止している。工場でもオフィスでも、期待された未来の姿は、依然として水平線の彼方である。ほんの数年前には、自動化された仕事場(オフィスと工場)という妖怪を前にして、労働者は震えあがり、社会計画担当者は、新たに失業する人たちの再訓練と再雇用のためのシナリオを書かなければならなかった。つい昨年までは、著名な予測者で、コンピュータを応用した新しい製品や産業の将来を尋ねられて、10億ドル以下の売上高をあげる者は1人もいなかった。今年は警戒の声がわき起こっている。コンピュータ革命はスローダウンしたのだろうか。
オフィスの自動化は、そのコンセプトがはっきりしていないということを含めて、いくつかの困難が伴うことが明らかにされている。これに対して工場の自動化の場合には、考え方を明確化することができ、したがって、その達成も容易であるように思われる。しかし、ロボットが受け入れられているという好意的なニュースはあるが、この疲れをしらない労働者が全体的に広く工場に導入されているわけではない。
広告にはきらびやかな絵が描かれているが、オフィスの実態を垣間見れば、"自動化された"オフィスの現状が、わずかにワードプロセッサと多目的に使われる複写機をもつだけだということが明らかになる。企業によっては、自動修正機能をもつタイプライタが、自動化の実態ということもある。人件費は上昇し続けており、機械の価格は低下傾向にある。われわれは現在、オフィスの基本的な仕事を自動化するための機械、すなわちワードプロセッサ、電子ファイル・キャビネット、電子メイル、ときには高速のレーザー・プリンタさえもっている。工場用には、ますます能力が向上しているロボット、NC工作機械さまざまな表現が可能なCAD/CAMがある。そうだとすれば、現実のオフィスや工場における停滞状況は、何が原因となっているのであろうか。
以下において、私は、コンピュータの前進を妨げているいくつかの問題点と同時に、すべてのマネジャーが認識しておくべき潜在的な困難を抽出することによって、コンピュータ革命の跛行的進展について分析することにする。革命が演じられている――あるいはさしあたり遅滞している――主要な競技場、すなわちオフィス・オートメーション、遠隔通信、人工知能の分野について、その発展と将来性を評価する。さらに、エレクトロニクス時代の進展とともに生じる問題についても論じる。例えば企業が情報化時代に深く突き進むにつれて大きな脅威となるデータの統合性の弱化は、そうした問題の1例である。
デスクもなく労働者も見えず
コンピュータが仕事場に着実に浸透するのを妨げてきた最大の障害物の1つは、その結果を測定するのが困難だということである。自動化の利益を測定する尺度を見つけ出すのは、オフィスではとりわけ難しい。販売業者は、顧客企業に対して最新の驚異的な機械を付加すれば奇跡を達成することができると信じさせようとしている。ペーパーレス・オフィスの実現はもちろん、デスクさえ必要としなくなる(コンピュータ・コンソールをおいたり、格納するためのデスクを除いては)というわけである。
未来のオフィスについての研究者や企業内推進者は、最も反復性が強く最もルーチンなオフィス作業――いいかえれば、工場での作業に最も類似したオフィス作業――をとりあげ、その研究を通じて生産性が向上することを明らかにしようとしてきた。実際のところ、こうした領域でオフィス・オートメーションは最も強い支持を得てきた。ワードプロセッサを使えば、最も仕事が遅いタイピストが最も効率のよい作業者になるし、レターや報告書を書き直さずに修正がいくらでもできるために、ボスや秘書にとっては大いに時間の節約になる。
1978年にVisiCalcでスタートしたコンピュータ集計用紙、電子スプレッドシートは、多くの企業で人気を博している。この電子スプレッドシートのおかげで、一部のマネジャーにとっては仕事が容易になった。また統計的手法の教育を受けたことがないマネジャーにとっては、スプレッドシートがなければ仮説の検証は極めて困難な課題であるが、このようなマネジャーには新しい世界が開かれた。価格がわずかに200~300ドルのものが多いソフトウェア・パッケージによって、会計業務やその他の煩雑で単調な記帳作業の負荷は緩和され、とりわけ小企業には大きな福音がもたらされている。ソフトウェア・パッケージには、企業データベースを構築し、維持するためのものもある(1)。したがって、ほとんどの企業は、ある程度までは自動化を歓迎している。



