モトローラ社のトップ経営者が、何年か前に、自社の経営訓練・開発のスタッフおよびその展開を観察したとすれば、それはアリゾナ州の研修施設に、モトローラ社の経営幹部が多数集まり、約6日間にわたり、その管理技能をみがき、その経営責任の複雑さについての理解を高めている姿を見たはずである。しかし、今日のモトローラ社では、そのような訓練は行なわれていない。同様なことはゼロックス、フェデレイテッド・デパートメント、ゼネラル・フーヅ社でも起こっている。

 今日、企業間の競争が激化し、さらに企業の再活性化の必要が叫ばれるなかで、上記の各社における経営訓練・開発プログラムの焦点は、企業戦略とその戦略の達成の方法に当てられている。現実的で、しかも企業の業績に注目する方法を採用することによって、これらの訓練・開発プログラムでは、経営幹部が市場における自社の競争力を分析し、さらに企業の戦略的目標を達成していくための現実的な行動計画を立案し得るよう導いていく。

 経営訓練の分野における専門家である著者は、アメリカの4つの大企業におけるプログラムを検討し、それらの間の共通の傾向を要約して、本稿で紹介している。

 アメリカの多くの大企業では、その経営幹部の訓練と開発の分野で、過去に実施していた方法とは根本的に異なった方法を実施しはじめている。この変化は訓練専門家によって推進されているものではない。経営最高責任者や現業部門の経営責任者が自ら運転席に座って指揮している動きである。この変化は、いわば基本への回帰といえる。すなわち、成果に結びつく訓練、ビジネス戦略を実行し、企業の目標を達成していくことに役立つプログラムを志向している。管理者の潜在的管理能力を開発していくというかつての訓練から乖離がはじまっている。これらの企業における経営訓練と開発プログラムでは、その企業の重役室に視点を合わせている。

 最近、筆者はアメリカの著名な企業の多くを対象とした調査を実施した。その調査では、次のような諸点が発見された。

 □ 経営幹部が、経営訓練・開発プログラムの開発作業に指導的役割を果たしている。

 □ 高い生産性達成の必要性、世界的規模の競争の激化、さらに多くの企業文化が必要としている変革の認識といった要因によって、企業の非常に高いレベルにいる経営幹部層に経営訓練・開発の実施が以前にまして必要となっている。

 □ 経営最高責任者を含めた多くの経営陣は、経営訓練・開発にかつてより大きな役割を果たしているだけでなく、自らプログラムの実施に参画している。

 このような変化の根本には、経営が一時道を見失ってしまったが、今ふたたび再編成をはかり、常道に戻るべきだという経営の信念が存在している。

 1980年に、ウイリアム J. アバーナシーとロバート H.ヘイズは、アメリカ人マネジャーの欠陥を数多く指摘した。すなわち、短期的業績への過度の関心、長期的視点に立った革新やリスク・テイキングを回避し、むしろ今年度の利益を増やすために経費節減に走る行動、さらに長期的な企業目標の無視といった性向である(1)。