どの業界を見ても、技術力が競争上の成功と、ますます強く結びつくようになってきた。しかし経営者が自社のR&D部門に適切な使命を設定しようとするとき、基礎研究と応用研究、市場指向型研究と技術指向型研究といったよく知られている区分が、現実の戦略選択に当たっては有用性を欠き、使えないということがわかってきた。

 例えば既存事業に直接役立つ研究をやりながらでも、その分野の技術の最先端の水準を維持することは可能である。しかし別の技術分野での最先端の水準は、目標を定めない基礎的な研究をやらなければ達成できないかもしれない。

 本稿の著者は、長年にわたる企業のR&Dの管理経験から、研究の方向を決めなければならないときに使う用語について、1つの考え方のフレームを示している。企業のR&Dを第1級の水準にするためのモデルといったものはないが、それを達成するためのさまざまなやり方と、その内容をはっきりさせることができる1つの考え方が示されている。

 あらゆる多角化企業のトップ経営者は、傘下の各事業の今後の技術開発をそれぞれの事業部にまかせるか、あるいは本社レベルで統一してR&Dを実施するかを決定しなければならない。事業部にすべて、まかせるやり方をとれば、短期的な利益達成指向のあおりを受けて競争上のリスクが大いに高まるし、本社で一括してR&Dを行なうやり方をとれば、そこでの研究成果がそれぞれの事業のニーズと噛み合わなくなる恐れがある。経営者は、どちらのやり方をとればよいのだろうか。また、その決定と同様に重要なことであるが、決定の結果をどのように評価すればよいのだろうか。

 技術管理業務の経験から、本社レベルで一括してR&Dを行なうやり方が成功するかどうかは、以下の要因によって決まるということがわかっている。

・本社に十分な額の研究予算があるので、中央研究所が独自で研究プログラムを決めることができる。

・中央研究所が独自の研究プログラムを決めるに当たっては、個々の事業の計画、戦略、プログラムと密接に連携をとり、それらをベースにして決めている。

・研究プログラムを決めるに当たっては、企業全体の目標と戦略を完全に把握し、それをもとに各事業間にバランスのとれた研究プログラムを設定している。

・採用可能な研究員のなかから、もっとも有能なスタッフを採用し、のちに経営職位に進んでいくか否かという観点よりも、むしろ研究上での業績と彼らの処遇、昇進をリンクさせる。

 R&Dを本社の中央研究所で一括して行なうやり方のほうが好ましいと考える明白な理由がいくつかあるので、まずそれらをあげてみる。すなわち、中央研究所でのR&Dは相乗効果、学際的な観点および成果をあげるまでの期間、という3つの点で優れている。技術のなかには、例えば複数の事業に関連したものがある。ゼネラル・エレクトリック社(GE)の例でいうと、ソリッド・ステート技術(産業用駆動装置、照明用安定装置、発電用部品、家電製品のコントロールなど多様な用途を持つ電力制御技術)は、半導体部品、モーター、家電製品、オートメーション・システムにも応用されてきた。さらに中央研究所のもう1つの価値は学際的なチームを結成し、革新的な技術アプローチを開発できるという点である。研究成果を製品化して成功した例として、CTスキャンがある。CTスキャン法開発のためにはGEに従来からあったX線事業からは生み出すことができない学際的な技術と知識が必要だったのである。しかし中央研究所では、これらの技術と知識を結合させる力があった。