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企業間の高速データ通信が可能になってから、かなりの年数を経過しているが、このデータのリンクを企業が戦略的に使い始めたのは、つい最近のことである。エレクトロニクスの道ともいえるデータ通信は、一般に買い手と売り手とを結びつけ、主として商品やサービスの販売に使われている。こうしたシステムは非常に大きな効果をもたらす可能性をもっているが、現実には、これへの参加を決定するのは、マネジャーではなくて、むしろ一般の社員である。
組織間結合システム(IOS、interorganizational system)は競争業者に対する優位性を作りだすことができるが、同時に売り手と買い手の力のバランスを変化させ、不健全な形で相互に依存せざるをえない状態をつくりだす可能性ももつ。
著者たちの議論は、会社とその競争状態に対してIOSが潜在的にもつ戦略的利益とコストを、マネジャーが比較考量するときに役立つ枠組みを与える。著者たちはまた、IOSの様々の運用のしかたがありうることを示し、さらに、このシステムへの参加のレベルに応じた効果を明らかにしている。
1966年のHBR誌の論稿でフェリックス・カウフマンは、ゼネラルマネジャーは自らの組織の境界を越えて社外に拡大したシステムの可能性を検討すべきであると熱心に説いている(1)。彼のこの論稿は、当時新しく導入されつつあったコンピュータのタイムシェアリングやネットワーク形成の可能性についての観念的な議論を展開したものであった。この論稿が書かれてからほぼ20年の間に、情報システム(information systems、以下IS)技術の発展によって戦略的重要性をもつ多くの新しい応用が可能になった(2)。
今日では、情報システム技術の最もドラマティックで潜在的な力を秘めている使い方は、企業の枠を越えたネットワークと切り離すことができない。このような組織間結合システム(interorganizational system、以下IOS)は、社会的、政策的にも重要な意味をもっている。このようなシステムは複数の企業によって共有される自動情報システムと定義することができるが、これらのシステムは、生産性やフレキシビリティー、競争力の向上の面で多くの企業に極めて重要な貢献をするものとなるであろう。
しかし、これまでの実際の例からみると、IOSは、買い手と売り手間の力のバランスを根本から変革し、特定事業分野での参入・撤退障壁を形成し、ほとんどの場合、同一産業内の競争者の競争上の地位を変化させる可能性をもっている。例えば、ある大手自動車メーカーでは、主要な部品供給業者との間でコンピュータ間通信システムを構築し、ジャスト・イン・タイムの在庫システムを導入している。
システムを拡張して主要部品供給業者側のコンピュータを走査する指示を付加すれば、この自動車メーカーは、購入予定部品の指値あるいは価格が最も低い(品質など他の条件は同じと仮定する)会社のコンピュータに発注することが可能となる。このようなシステムが部品供給業者間の競争を激化させる一方で、自動車メーカーの部品業者に対する交渉力を強化する方向に作用することは、容易に推察することができる。
しかし残念なことには、大きな利益が見込まれるにもかかわらず、企業は広く戦略的な意味を認識しないままで、システム導入の意思決定をしている。時には、この意思決定が生産管理担当者レベルで行なわれることさえある。この種の事例のおよそ半分の場合、情報の流れを速くし、データの統合を促進するという名目のもとで、新しいシステムは在庫維持コストと経営リスクを供給業者側に一瞬のうちに転嫁してしまう。このようなバランスの崩れは、供給業者が効率性の向上した情報システムによって得るいかなる利益よりも明らかに、はるかに大きな意味をもつといえるであろう。
IOSのなかには、すでに10~15年の歴史をもつものもあるが、その歴史から、この種のシステムのもつ影響をはっきりと読みとることができる。最もドラマティックで資料も最もよく整っている例は、航空産業で得られる。それは航空機座席予約システムに関するものであり、買い手・売り手関係にある同業種の競争者と諸組織によって共有されるという特徴をもつIOSであった。民間航空委員会(CAB)における証言で、フロンティア・エアラインズ社は、広く利用されている予約システム、APOLLOの開発者で所有者であるユナイテッド・エアラインズ社が競合企業の座席利用状況をモニターし、さらに価格を下げたり、あるいは旅行代理店に特別のメッセージを送るためにこのシステムを使って諮り、その結果、不公正な競争上の利益を得ていると主張している。アメリカン・エアラインズ社とユナイテッド・エアラインズ社の両大手輸送企業が、旅行代理店経由の予約客のほぼ3分の2という基幹的な市場にアクセスする予約システムをそれぞれ保有しているために、この係争問題は1983年の国民的な関心事となった。
多くの組織体へのコンピュータや通信技術の急速な普及を背景として、類似したIOSの成長やその影響が産業界の広い範囲で生じる可能性が大きくなっている。航空機座席予約システムに関するCABの調査は、関係者がIOSの影響を事前に認識しておく必要があることを示している。さらにそれは、この急速に変化する環境のなかでは、社会、法律、戦略的経営の観点が必要であることをも例示している。



