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もし選択が許されるとすると、あなたの企業のビジネス戦略の達成が不可能であると判断するのは、いつだろうか。結果が出たあとだろうか、それともプランがまだ青写真の段階にあるときだろうか。この答えは明確であるはずであるが、あまりに多くの経営管理者が、この明確な論理を完遂することに失敗している。すなわち、長期的な人的資源プラニングの実行による利益をはっきり認識できないためマーケットにおいて、不愉快で被害の大きい失敗に終わる危険性の確率を高めてしまっている。
しかし、人的資源プラニングもビジネスの基本的な運用手法として定着しはじめている。このプラニングには、かつてから行なわれてきた人的資源の不足してくる分野について、予測や後継者育成計画といった伝統的手法に加えて、個人または組織の業績を向上させ、従業員のやる気を引きだすための創造的な手法もつけ加えられている。また人的資源活用のための活動と戦略的プラニングの策定との間の関係も、急速に関連づけられてきている。このような企業では、トップも企業の利益の向上において人的資源プラニングが十分に役立っていると認めはじめている(もっとも、この貢献の程度は数量的に示すことは容易ではない)。
本稿では、人的資源経営の分野での諸変化の事態を紹介している。大企業の人的資源に関する諸活動の調査、さらに現場でのコンサルテーションの諸経験から、著者は人的資源プラニングの現状を分析し、複雑な経営手法を活用する企業に特徴的に発見される傾向、すなわちプラニングの過程において多様なプラニングの手法が使われている実態を解明し、あわせてどんな人的資源プラニングが有効に機能するかを明らかにしている。
ゼネラル・エレクトリック社では、人的資源について長期的な視点から分析していく試みをはじめるのに先立って、ビジネスのプラニングは何年も前から実施されていた。その過渡期において、GEでは、そのビジネスのプランにおいて、企業の資源を新製品、新技術に振り向けていく必要に迫られ、大きな問題に直面することとなった。GEの前会長であるレジナルド・ジョーンズは筆者に次のように語っている。「その当時(1970年)は、まったく気づかなかったが、わが社は3万人の電気工学のエンジニアを抱える企業であったが、実はすでに電子工学のエンジニアを必要とする企業に体質を変えてしまっていた。1970年に起こったこの変革に企業として準備ができていなかったために、1970年代半ばになると、われわれは大きな問題にぶつかることとなった」。GEではこの経験の結果の反省から、1970年代後半にGEのマネジャーに将来の人的資源の必要領域を明確化し、計画を立てるように要求することとなった。
人的資源プラニングを実施しないために発生した上記と類似の手痛い失敗例は、随所に発見される。例えば、大きな多国籍企業であるアルミニウム製造会社の例を見よう。この企業ではブラジルにコンピュータを使った高度技術を駆使する精練工場を建設することになった。この新技術は、この企業の本国では大きな成功をおさめていた。しかし、ブラジルにおいては、この種の施設を運行していくに必要とされるコンピュータ技術者、サービス要員を獲得すること、あるいは訓練することが不可能であることを、この企業の経営陣は最終的に思い至ることとなった。その結果、ブラジルで調達可能な人材に合わせる形に設備を変えるために、多額のコストをかけて計画を変更せざるを得なかった。
軍需産業にたずさわるある大企業では、政府からきわめて要求の高いプロジェクトを請負った際に"人材"危機に直面することとなった。この種のプロジェクトに対しては、この企業ではマンパワーの計画が、まったくできていなかったからである。この企業では、いくつかの事業部から多人数のエンジニアとマネジャーを引き抜いて、このプロジェクトに投入し、彼らの現有の能力をはるかに上まわる責任を与えざるをえなかった。さらに非常に費用のかかる外部採用も急速に進めた。
このプロジェクトはともかくも完遂したが、この際に生じた多大の緊張とかかった高額のコストから、トップマネジメントとしては、ビジネス計画のなかに必ず人的資源プラニングも含めていくべき必要を学んだ。その後、この企業では急激なレイオフを避けるためにも人的資源プラニングを活用しはじめた(急激なレイオフは、地域社会全体に悪影響を及ぼすことになる)。
この種の経験を通じて、アメリカの多くの企業では、その企業の専門職、管理職、技術職の人材に関して計画を立てはじめることとなった。その計画の規模は企業によって、まちまちである。例えば、一部の企業では、従業員の頭数の計画や経営者の後継者計画の段階にとどまっている。しかし、極めて多くの経営者が、次の2つの重要な側面から企業の人的資源プラニングのあり方について再検討をはじめている。
第1に、これらの経営者は、従来から行なわれてきている雇用、昇進といった手段に加えて、企業の業績を向上させ、従業員のモラール(意欲)を高めるための創造的な試みを導入しはじめている。第2に、彼らは、人的資源プラニングと企業の長期ビジネス目標を関連づける努力をはじめている。
ビジネス目標と人的資源プラニングをどう関連づけていくかという点については、経営陣がプラニングをどのように認識しているかという点に大きな影響を受ける。本稿の後段で紹介するように、経営者によってはインフォーマルな形のやり方を好んでいるが、他の経営者は文書にしたメモや計画の形を好んでいる。しかし、それがどのような形になるにせよ、経営者が次の事実をしっかり認識していくことが、もっとも重要となる。すなわち、人材活用の決定がその企業のビジネス計画を達成していく能力に影響を与えるという点、またはその逆の関係が生ずるという観点を認識することが大切である。したがって、いかにラフに描かれた企業のビジネスの青写真にあっても、筆者の提案する"人的資源プラニング"過程のモデルに示されたフィードバックのループ(循環)が、何らかの形で含まれているべきである。



