-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
一部のマネジャーは、新しい職位に就いたとき、すべての面でスムーズに職位を掌握していく。この人たちは、その上司、部下たちと効果的な人間関係を築き、仕事のやり方を学習し、時がたつにつれて自己の信用を高め、ついには仕事を自分のものにしてしまう。しかし、マネジャーによっては、このようにスムーズに新しい職位を掌握することができない人もある。人によっては、まったく大失敗に終わることすらある。
本稿の著者は、新しい職位に就いた14名のマネジャーについて追跡調査を行なったが、その結果、いくつかの要因が新任マネジャーの職位掌握の成功の条件となっているだろうということを発見した。同一産業での過去の経験、自分に何が期待されているかについての明確な理解、上司からの支援、他との良好な人間関係といった要因が、その例である。
この著者の発見でもっとも注目すべき点は、新任マネジャーが完全に新しい職位を掌握していくプロセスには、長い時間がかかるという点である。もし企業のトップとして、経験豊かな信頼のおける後継者を育てたいと願うのであれば、いくつかの職務をそれぞれ短期間ずつ経験させる方法は避けるべきである。
この子会社は経営上、大変な苦境に陥っていた。そこで、親会社の経営陣は、マーケティングを専門とする新しい副社長を雇った。この人物は、他産業で羨望に値する業績をあげてきており、子会社の経営の立て直しの全権を与えられることとなった。彼は、この会社のマーケティング部門を、製品ブランドごとに区分する形に組織を変換した。あわせてセールス部門も再編成して、新しいマーケティング戦略が実施できる形を整えていった。しかし利益率はますます低下し、9ヵ月後には彼は、この職位から退かざるをえなかった。
もう1つの企業でも、親会社のトップ経営者がその会社の子会社の1つで大きな赤字に悩む会社の業績好転を目的として、他産業からマネジャーを雇い入れ、彼に大きな権限を与えることとなった。この新しいマネジャーも、製品ブランドごとの区分を中心とした新しいマーケティング戦略を展開した。1年以内に利益率は大幅に向上し、さらに3年以内には、子会社の決算は大きな黒字となり、売上げも倍増した。
この2つの例は表面上は驚くほどよく似ている。2人のマネジャーは、ともに30代半ばであったし、2人とも新しく参画した産業には過去に全く経験を持っていなかった。2人は、非常によく似たマーケット戦略を展開した。さらには、2人とも非常に気難しい上司につかえていた。にもかかわらず一方が成功し、他方は失敗した。どのような要素がこの成功、失敗の原因となったのであろうか。
この質問に答えるためには、この2人のマネジャーが遭遇した状況、彼らの過去の経験、職位を掌握していく過程について比較し、分析していく必要が出てくる。
世の中では極めて特殊な例が注目されがちである。しかし一般的な例であっても、ゼネラル・マネジャーであれば、その人たちが40代後半までに、3つから9つの管理職位をこなしてきているという調査結果がでている(1)。職位を変える回数はたしかに多いけれども、それぞれの状況、そこに含まれるマネジャーが異なっているために、職位を掌握していくプロセスを一般化して理解していくことは、極めて困難である。
経営陣の後継問題の例を14ケース調査することによって、筆者は、すべてのケースに共通して発見される問題を摘出した。また、後継者に影響を与えるだけでなく、新任の後継マネジャーが、どの程度新しい職位で成功できるかに影響を与える諸要素も抽出した(調査方法の詳細については、「マネジャーが職位を掌握するプロセス」に述べているので参照されたい)。
職位を掌握するという言葉を筆者は次のように定義している。すなわち、「あるマネジャーが新しい職位に就いて、その組織の経営、リソース、制約条件を十分把握し、その職位を十分にマスターしていくまでに経過する学習と行動のプロセス」という定義である。



