-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
多くの販売幹部にとって、生産財セールスとは盲滅法でがんばることも同然である。できるだけ多くの見込客をできるだけ長く追い回せば、最後に何人かは買ってくれるだろうというのだ。諦めることはない、という点では著者も同意する。だが、それにつけ加えて、何も盲滅法でやることはないというのである。確かに著者が示してくれた方法に従えば、幹部は何年にもわたる販売手法を開発することができるだろう。
著者は自分の会社、ボール・コーポレーションを例に、販売組織に対する顧客の信頼を獲得するための努力を手始めとして、その過程を説明してくれる。それによると、ボール社のセールスマンは会社の製品ラインについてすべて説明し、工場見学のため潜在顧客を本社に招待する。続いてアイデア段階に移るが、これには市場占有率を高め、原価を引き下げるための改善策を提出できるように対象顧客を研究することも含まれる。このような一切が成功しない場合、最後にセールスマンは、もっとも手のこんだコミュニケーションと感情に訴求する方法を用いるのである。この長期計画の期間中、セールスは絶えず行なわれているといってよいだろう。だが著者は、いつセールスが実現するにせよ、全社が一丸となって取り組むことが必要だと忠告する。
多くの幹部にとって、生産財の販売は不可解ななぞである。途方もなく多くの努力と思考と強い個人間の結びつきが投入されないことには、1つの販売キャンペーンが成功しないし、それも最初はたった1人の購買担当者への接近から始まって、最後は社をあげての購買行動として終結する。その過程は極めて複雑で、ほとんど言葉では表現できないほどだ。しかしながら、人を購買に向かわせる独創的な技術は、確かに存在するのである。
わたしは本稿で、生産財の見込客を顧客に変えるための方法を提案しようと思う。とはいえ、顧客維持的な販売活動を軽視するつもりは、さらさらない。顧客の維持は、利潤を得るために重要なことだからだ。創造的な販売をやろうとすると、お客を訪問するにつけ、工場の体制を新規の取引に合わせるにつけ、金がかかる。
一方、商談はそう簡単にはまとまらない。確実に売れるようになるまでには、時間がかかる。だが、潜在顧客を十分につかむ努力さえ怠らなければ、やがて欲しいときに新規のセールスを実現するための機会は増大していく。
セールスの過程を論ずる前に特に強調しておきたいのは、ここでは品質、サービス、経済性など、さまざまな要因を検討したうえで選択する買い手について述べているということである。ただ値段の安さだけを要求する買い手は、問題にしていない。もっともすぐれた買い手は、長期的な価値を求める。こういう人びとは、短期間の価格にとらわれると、結果的に生産コストの増大を招き、かえって逆効果になりやすいことをよく知っているのである。
セールスマンに経験がないと、金の話をしてはならないのに、最初は必ずといってよいくらい価格のことを考え、それを話題にする。きっとこう考えるのだ。「お客が品質とサービスと値段をもとに判断しようとしているときに、ぼくは自分で何も出荷していない以上、どうして品質やサービスを保証できようか。残るのは値段だけじゃないか」。
わたしは自社の販売部門に、会社と自分自身を相手に売り込むまでは、誰とも値段の話をするなといっている。買い手というものはたいてい、自分が本当に取引したいと思うセールスマンを値引きにもっていこうとするものだ。ここから、わたしの販売第1法則が出てくる。それは、人は自分が買いたいと思う相手、値段その他の決定要因を自分の都合に合わせてくれる相手から買う、というものである。
ビジネスにおける人間関係を論ずることは、最近、はやらなくなった。そこに情を交えてはならないといって教育される。冷静に計算して、個人的な感情は排斥しなければならない、というのである。
そんな言葉を信じてはいけない。人間関係は、この世の潤滑油なのである。ビジネスマンは経済と投資に関心をもっていると同時に、人間的かつ社会的な存在なのだから、セールスマンはこの両面から人の気に入られる人間でなくてはならない。買い手は理性によってしか行動しないというかもしれないが、プロのセールスマンは、相手が理性だけでなく感情によっても左右されることをよく承知している。



