オフィス・ワーカー1人ひとりが、個人専用のコンピュータ端末機を持って、他人に邪魔されないで各人の仕事を遂行することができるとすれば、どんなに大きな福音になるか考えてみよう。逆に、各オフィス・ワーカーが大勢のなかに混じって、それぞれが自分の小区画で、その周りをカタカタと騒々しいコンピュータや、ひっきりなしになり続ける電話、同僚と打合せをする他の従業員の小区画に取り囲まれながら仕事をしなければならないとしたら、どんなに無秩序で雑然とした状態になるか想像してみよう。各人は、仕事の道具は持っているが、プライバシーをもって仕事をすることはできない。

 著者たちによれば、こうした状態は、仕事の場所が共用化され、それと同時に人びとが行なわなければならない知識労働の量が増加するにつれて、一般的なものになっていく。著者たちは、オフィスが"機能集約型の配置"で設計されるべきであると提案している。この機能集約型配置では、従業員1人ひとりが個人のホームベース(本拠地)を持つが、そのホームベースはそれぞれが、静かな場所、共用設備のある部屋、その他の共用の場所につながっている。小型の携帯用端末機があれば、従業員は、それぞれに自分の仕事をするのに最適な作業スペースに移動することができる。機能集約型配置に従うオフィスは、プライバシーと協働の両方を強化するのに役立つことを、著者たちは明らかにしている。

 結論として指摘するのは、ここで提案しているような種類のオフィスは、経営者が作業場所についてデモクラティックな考え方を持ち、信頼の空気と責任を分担する雰囲気とをつくることを前提にしている、ということである。

□ ヒューレット・パッカード社は長い間、オープン・スペース方式のオフィスを支持してきた会社であるが、同社の看護婦は耳栓を常時保管している(1)。

□ ディジタル・エクイップメント社のオフィスもオープン・スペース方式であるが、各部門の多くのマネジャーは、部下が携帯用端末機を持ち帰り、自宅で仕事をすることを許可している。

□ ゼロックス社では、販促用映画の試写を見た1人の重役が、これに満足せず2、3の同僚と内々で打合わせをしようとした。自分のオフィスは遠く離れているし、会議室を予約する方法もなかったので、彼は最も手近にあったオフィスをむりやり使うことにした。その結果、このオフィスの正当な利用者は廊下に立ったままでいなければならなかった(2)。

 以上の事例から、オフィスでの作業の仕方や事務処理技術の様々の側面に生じている変化のために、仕事の遂行がいかに困難になるか、そして決して簡単になるものではないことが明らかになる。ヒューレット・パッカード社やDEC社を例にとれば、その従業員は、神経を張りつめ、集中して作業を行なうことが要求されているが、それにもかかわらず彼らは、オープン・オフィスでコンピュータ端末機を使っているのである。ゼロックス社では、自分のオフィスから遠く離れて"あちらこちらを歩き回りながらマネージをする"重役は、他のマネジャーの仕事を妨げるか、あるいは重要な会議や打合わせを先に伸ばすかせざるをえない。その結果は、ひらめいたアイデアのいくつかは、どこかに消えてしまうということになるであろう。

 マネジャーは、どのようにすれば、オープン・オフィスの持つコミュニケーションや協働の利点と、クローズド・オフィスの静寂やプライバシーとを同時に手にすることができるであろうか。どのようにすれば、自分のデスクにいる時の便利さを失わずに建物のなかを歩き回ることができるであろうか。本稿で、われわれは、オフィスについての一般的な考え方にあえて疑問を提示し、どのようにすれば、マネジャーは新技術の利点を活用し、同時にその不利益を避けることができるかを示している。マネジャーは、以下のような組織目標を支援するために、物理的なレイアウト、設計、コミュニケーションの統合という方法をとることが可能である。

・インフォーマルな情報のやりとりを強化する。
・別の作業チームや研究グループに人を再編成する。
・専門的な機器を多数の従業員が使えるようにする。
・個人の独創性と活動力を尊重する。
・偶然の思いつきから利益を引き出す。
・優秀な従業員を引き付ける。
・事務処理コストを抑えて生産性を高める。

 オフィス環境は、もろもろの活動が確実に遂行されることを保証はしないし、またそれを妨げることもない。しかし、ある機能を支援し、その一方で別の機能を抑制することが可能である。すでに企業によっては、ファシリティー・マネジメント、人事管理、オフィス・オートメーション、エンジニアリング、保健、設計などの出身の人びとで構成された"スカンク"グループ(訳注1)が、オフィス環境の創造を目指してアイデアを出しあい、検討を進めているところもある。その目的とするオフィス環境は、退職率の引下げ、無断欠勤の防止、健康上の問題についての不満の除去、イノベーションの促進、最小限の余裕スペースでの効率的な作業の推進を可能にするものである。