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新規のプロジェクトでは、原予算の2倍、3倍あるいは4倍にまでなるようなコストのオーバーランに陥ることがある。ハイテクにかかわる投資の場合に特にそれが多い。そういう企業では、まさに悪夢にうなされた状態になり、やっとプロジェクトが完成し運転し始めることができても悪夢は去らないのだ。開発段階での資金の流出を止めるために行なった必死の対応策、例えば、不測事態のためにとった臨時費のカットなどのために、そのプロジェクトは、終生かたわのような状態になってしまうのである。
プロジェクトのスタート時点での不十分なデザインが、こうしたオーバーランの主要な原因となる。さらに、パニック状態で資金の節約をしようとして問題を一層悪化させるのである。こういう事態が起こったとき、経営のトップは完全な設計のやり直しとデザインの変更を指示する必要がある。
それから、マーケティング面を考慮に入れてコストを再検討すべきである。経営者は、火に油を注ぐように資金を投入するのではなく、必要ならば、そのプロジェクトを放棄する決定をなすべきである。その際、プロジェクトの管理責任者の公正な評価と勇気とに正当に報いるような企業環境がなければならない。
ある新工場は、100%のコストオーバーラン(予算超過)があり、建設が8ヵ月も遅れ、操業開始6ヵ月後の現在でも当初の設計で計画された生産能力の半分以下で稼働しているにすぎない。たて続けに起こる生産面での危機状態のために労働者は不満を抱いており、取引先は待ちきれなくなりつつあり、当初のプロジェクト担当マネジャーはクビになり、工場長は不安でおちつかなくなっている。
不幸にも、このような状態が最近における多くの新規プロジェクトの運命を物語っている。資本支出のオーバーランと新工場の操業不振とが、多くの先端的なプロジェクトをむしばんでいる病気の症状である。稼働能力、プロジェクトの進行予定表およびプロジェクトのコストの3つについての予想が、不慮の災難におかされやすいということが新規プロジェクトに関する調査レポートにより実証されており、新しい技術を使うケースで特に顕著である。英国では、この病気に"コンコルド症候群"という名前がつけられている。いうまでもなく当初の推定予算を数千%も上まわるオーバーランをひき起したあの航空機プロジェクトの名誉をたたえたものである。名前は国によって違うかもしれないが、こういう現象は共通である。米国では原子力発電所建設のプロジェクトでのオーバーランが大きな話題になっている。どこの国においても新規プロジェクトは、特にハイテクの場合に多いが、予定のスケジュールどおりに終わり、予算以内でおさまり、かつ所定の稼働基準どおりに動くことは、まれなのである。
ランド社の先端的な製造設備プロジェクトについての研究は、この問題の年代別の記録を示している(1)。ランドの研究は、エネルギー産業のみについての最先端の技術に焦点をあてているものであるが、こうした先駆的な工場が当初の不十分な設計のために精彩を欠く稼働状態にあることをよく示している。このデータによれば、例えば最先端をいく製造工場の建設費の最初の予想額は最終コストの半分以下というのが典型的であり、ほとんどが、ほぼ3分の1くらいとなっている。最終コストの前後20%以内で当初、予算がたてられたケースは非常にまれである。
ランドのレポートによれば、当初のコスト予想が詳細な設計仕様書によらないで、おおよその見積りによる場合にコスト見積り上の誤りがはなはだしく多いということが、はっきりしている。またコスト予想が研究開発面のデータに基づいてたてられている場合、平均してコストの超過は100%以上になっている。
誰でも予想できるように、プロジェクトの定義がより煮つめられ、技術面でのデータが増加するにつれてオーバーランは減少し、全項目のコスト集計をとり込んだ設計段階では金額の10%くらいまでは下がるのである。したがって、先を急ぐためとか設計部門の人員不足や資金不足などのために当初の計画とプロジェクトの定義づけの段階で、資金と時間を節約しようとするために、いつも悲惨な事態が起こるのである。
このランド報告書の結論をPIMSのデータも立証している(2)。PIMSの内容は、多様な産業に属する企業の多数の起業開始のケースを調査したものである。PIMSの情報は、設計した能力に対する生産量の実績との比較ではなく、計画に対するマーケットシェアの実績という尺度で新規プロジェクトの成果を見るもので、ランドの調査による結果と完全に比較可能とはいえない。しかし、生産量とマーケットシェアおよび計画生産量と全体計画とは、それぞれ十分に類似性があり高度の実証性があるものといえよう。
このようにPIMSの研究結果は、ランドのエネルギー産業のみについての研究データがエネルギー特有のものではなく、他の産業にも同じようにあてはまることを力強く実証しているのである。PIMSのデータでは、典型的な新規プロジェクトの例は当初計画を大幅に下まわっていることを示しており、調査対象のうち80%以上のプロジェクトが当初予想したマーケットシェアを達成できずに終わっている。



