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一国の活動における他の分野の場合と同様に、産業の場合においても、技術は、それを管理するためにつくられた制度と政策の枠をはみ出してしまうことがよくある。現在では、国家間における経済的競争が、技術的優位性に依存する傾向がますます強くなっているが、その結果、政府は国内の圧力に押されて、かつて大量生産商品の国家間の自由な流れを禁じるために使われたのと同じ障壁を技術集約型の商品にも適用して、技術的優位性を守ろうとすることが多い。
この新しい保護主義によって、製品の設計、工場立地、競争の戦略に関する多くの困難な選択課題が、マネジャーにつきつけられることになる。著者は、この保護主義の様々の形態やこれに対する賛否の代表的な議論、そして経営意思決定に対してもつ多様な意味について分析を加えている。
国際間の競争のルールは、現在、激しい変化をみせており、そのために各国政府は、ある古い政策の改訂版的な政策をとることをよぎなくされている。それは、技術版重商主義という政策である。かつての国家は、国外の原料と最終製品市場とを求める一方で国内産業を保護することに熱心であったが、現代の政府は、それにもまして自国の技術的基盤とそれに依存する産業(あるものは成長を始めたばかりであり、またあるものはしっかりと定着している)に対する熱心な保護者となっている。このとりわけ技術を重視した形での重商主義の復活が、マネジャーに対して意味するところは、有効な経営戦略の策定作業が極めて複雑になるということである。
このような"新しいスタイル"の保護主義の存在を証明する根拠としては、実に多くのものをあげることができる。例えば、政府はR&Dを支援するのに、特許や教育システムなどの伝統的な方法に自らを限定することなく、他国からのハイテクノロジーの輸出に対して障壁を形成している。国際間の技術の移動に対する様々の障壁の例をあげれば、表に示すとおりである。
輸入制限の1つのグループは、関税法の適用範囲を拡大して、外国の輸出助成ばかりではなく、R&Dに対する助成にも相殺関税を適用しようとするものである。1982年にアメリカ国際貿易局は、ベルギーの鉄鋼に関する研究助成に対して相殺関税を課すことを承認したが、その時の論拠は、ベルギーの研究が、「唯一特定の産業に影響を及ぼす問題に関するものであり、………その成果を利用しうるのはベルギーの生産者のみである(1)………」ということであった。
大多数の工業国における産業政策についての現在の議論は、こうした問題をほぼ同じような形でとり上げている。ある国が1つの産業あるいは1つの技術を選定して特別に振興するとすれば、他の国はそれに対して保護策をとるべきか。これに対する答は"イエス"とされる傾向がますます強くなっている。ヨーロッパがいまだR&D段階にあるヨーロッパの産業を保護するために、日本からの複数の輸入品について交渉してきた"自主"規制は、そうした傾向を示す1つの例である。
規制方法のもう1つのグループは、特定の技術の輸出を禁止するものであり、これは一般に安全保障上の観点から行なわれる。最近のニュースでは、アメリカが行なったソ連に対する"戦略的技術"の輸出禁止や核技術全般の輸出禁止などがみられる。この場合、機密情報に対する現実的な脅威以上のものが問題とされる(ソ連の石油パイプラインの例を想起されたい)。米国関税局のプロジェクトExodusは、ある種のパーソナル・コンピュータを含む技術型輸出品を監視するものであるが、その背後にある考え方が、国外に居住する自国民を自社の研究所に雇おうとする企業意思を制約することに、簡単に適用される可能性をもっていることは確かである。
民生用の製品に具体化されている技術レベルが、しばしば軍事製品に具体化されている技術レベルに優っており、そのことに政府が正当な関心を有していることは事実である。しかし、規制策の多くは、軍事的なものよりも経済的な競争を事前に防ぐためにつくられているように思われる。例えば、一部の諸国は今でも貴重な農作物用の成長促進物質の輸出を制限している。おそらくは国内の防衛産業の競争力の確保を目ざしたものと考えられる1981年の米国の法律は、ある種の軍事技術の国外への移転に対して、政府の高いレベルでの承認を要求している。また、ヘキスト社とマサチューセッツ総合病院との間におけるバイオテクノロジーの研究に関する協定について、会計検査院は関心を抱いており、利益を受ける外国企業からR&D助成金を確保するための立法化の可能性もあることを示唆している。
第3の種類の障壁は、技術が輸入される条件を規制することによって自国のR&D型産業を振興しようとする政府の政策に役立つ。日本の通産省は、特許権のロヤルティーを低く抑え、国内企業の第3国市場への輸出の機会を確保することを目的とした一連の戦術の創始者である。アンデス条約諸国や国連貿易開発会議(UNCTAD)は、1960年代に、この問題をとりあげているが、この時にはライセンサーからライセンシーへの部品の販売において、過大なロヤルティーや正常でない移転価格が見られるという調査結果に基づいていた。この種の規制が、技術移転を阻害し、経済発展を妨げることを論拠として、いくつかの先進国、とくに米国はこのような傾向に対して抵抗してきている。




