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多国籍企業(multinational corporations、以下、MNC)は、開発先進国の消費財を開発途上国(less developed countries以下、LDC)で、どのように販売しているのか。また転入させる商品にどのような改訂を加えるのか。なぜ、こうした改訂を行なうのか。MNCはLDC市場に消費財を適応させる作業プロセスをどのように管理しているのか。これらを中心にしたいくつかの疑問の解答を見いだすために、著者たちは最近、22のLDCにおいて販売活動を行なっている消費財メーカー子会社61社を対象とした調査を実施した。
調査結果から、MNCが開発途上国で販売している消費財の大半が同社の本国市場で誕生していることが分かった。多くのMNCに迫る誘惑は、全市場に通用するように商品を標準化したいということである。しかし、著者たちにいわせると、それよりも"はるかに妥当な"マーケティング戦略は、地元の習慣、市場環境に消費財を適合させることだという。
某大手MNCが、かつて本国市場用に考案されたパッケージをそのまま使って、アフリカの某国でベビーフードを販売しようとしたことがある。同社の正規のラベルは、赤ん坊の写真にびんの中身であるベビーフードの種類を解説した短文を付けたものであった。アフリカの消費者はこれをひと目みたとたんに、残念ながらショックを受けたのである。なんと、そのラベルから、びんの中身は赤ん坊の挽き肉と解釈してしまったというのだ。
別の米国企業は、ラテンアメリカで新発売したばかりの知名度の高いクッキングオイルのブランドネームが、スペイン語では"ろばの油"という意味になることを知って震え上がってしまった。また、東南アジアで歯みがきを販売するにあたって、歯が白くなることを強調したMNCがあった。ところが、売上げが伸び悩んでいるので調べたところ、すぐに明らかになったのは地元民は黒い歯を魅力的と考え、わざわざ、びんろうじゅの実を嚙む習慣があるという事実であった(1)。
なぜ、このようなマーケティング上の大失態が起こるのか。関係した多国籍マーケティング担当マネジャーが、開発途上国における消費財購入経験や行動が極めて多岐多彩であることを理解しようとしなかったからである。MNCは、通常、転入商品をLDCの大都市でまず発売する。こうした都市地区では、この種の商品は富裕な地元民やカネのある国籍離脱者の生活様式のなかにスムーズに収まってしまう。しかし、こうした都市居住者はLDCの全人口の20%にも満たない場合が多いのである。
都市郊外、地方の粗末な住宅に人口の大半が群らがり住んでいるのが、LDC国の典型的な実情なのである。こうした市民は概して技能を持たず、持ったとしても中途半端なために収入も少ない。その人口数字そのものは、まことに魅力的な市場に映る。こうした顧客に到達するためには、地元の文化的趨勢および洗練されていない消費者に、商品のほうを合わせなくてはならない。残念なことだが、こうした状況のなかでマーケティング・マネジャーは往々にして誤った決断を下してしまうものである。
ミスをできるだけ少なくするためには、マーケティング・マネジャーたる者は、LDC市場行きの運命を担う商品の選定にあたっては、十分な配慮を下さなければならない。これは決して単純なことではない。ラベル、パッケージ、成分など数多い商品特性いっさいが文化的意味を持っているだけに、その地元社会の要求内容に合致させる努力が必要となってくる。どの特性をどの市場に適合させるべく改訂するか。こうした特性の改訂を要求するのは何か。要するに、どうすれば現代的商品をLDCにぶじ転入させることができるのか。
われわれは、22のLDCにおいて販売活動を行なっている消費財メーカー子会社61社を調査し、転入させる商品の改訂作業内容を確認した。調査にあたっては次の3点を中心項目とした。
1. 現在的消費財を開発途上市場へ転出させるうえでの障害
2. 転出させる商品の改訂内容
3. LDC市場むけに商品を改訂するプロセス
調査方法
調査開始時には、LDCに550社以上の子会社を持つ50企業をサンプルとして選んだ。これら企業の大半は、"外国で営業活動に従事している米国企業ダイレクトリー"に収録されている。食品、飲料、薬品、化粧品、一般消費財業界に属する企業をサンプルとして抽出したのであるが、最大の抽出基準は、企業が消費者むけパッケージ商品を主力にしているかどうかにおいた。英国企業1社を別にすれば、すべての回答企業は米国に本社をおいている。
32社に電話を入れ、19社から世界本部もしくはLDC内子会社へ直接質問状を送付する了解を得た。米国内回答者から36通、LDC内回答者から25通の完全回答ずみ質問状を受領した。合計回答数は61通である。回答者は国際マーケティング・マネジャー、国際ディビジョン・スタッフ、国際部門担当の副社長などであった。
情報を寄せてくれたMNC19社は以下のとおりである。CPCインターナショナル、コルゲートパーモリブ、カナダドライ、チーズブロウ=ポンズ、ゼネラルフーヅ、クラフトフーヅ、ユニレバー、ピルスベリー、ファイザー、レブロン、クエーカーオーツ、ローヤルクラウンコーラ、セブンアップ・インターナショナル(フィリップ・モリス社の1ディビジョン)、ミードジョンソン、スタンダード・ブランズ・ナビスコ、ワーナー・ランバート、ヘレナルビンシュタイン、ジョンソン&ジョンソン、エリ・リリー。
以上の企業の事業相手国は次のとおりである。インドネシア、マレーシア、フィリッピン、タイ、スリランカ、インド、アルゼンチン、ベネズエラ、ブラジル、チリ、コロンビア、エクアドル、ペルー、ウルグワイ、コスタリカ、グアテマラ、ジャマイカ、メキシコ、パナマ、ジンバブウエ、ナイジェリア、エジプト。
回答を依頼した情報は、子会社の商品ラインにおける商品数、および最初に米国もしくは英国で発売された商品比率などである。この情報をもとにしてLDC商品ラインのなかに占める元米国・英国商品の比率を割り出した。回答者は次に、米国・英国で最初に発売され、次いでLDCに転入された3種類の商品にしぼって次の質問に回答している。
◇ブランドネーム、パッケージ美的価値、パッケージ保護機能、計量単位、成分、商品特質、ラベル、使用法解説、パッケージサイズなどの商品特性について、改訂したかどうか。
◇改訂した場合には、変更を促した理由(表1参照)。
消費財の転入
調査で分かったことは、LDC市場に転出させる商品の選定は、本社が時には手を貸すことはあっても、原則としてLDCにいるマーケティング・マネジャーの仕事だという点である。地元のマネジャーが親会社が全世界に流している商品の一覧表のなかから、自分の市場に転入させる商品を選びだすというのが通例なのである。例えば、チーズブロウ=ポンズやレバー・ブラザースの子会社のマーケティング・マネジャーが市場参入の機会ありと見た時にとりかかる仕事は、別の系列子会社が販売している商品で、自分のところの市場ニーズにぴったりのものがないかどうかを商品一覧表で確かめることである。一覧表のなかから有望な商品を見つけたならば、消費者テスト用にサンプルを調達する。商品を改訂するかどうかは状況次第である。テストの成果が上々であるならば、子会社として本格的マーケティング計画に取り組む。



