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直接労務費が生産コストのなかで圧倒的な割合を占めており、その生産コストが操業経費の大部分を占めていた時代では、ロジスティックスが少々劣っていても総合的な競争力には、いささかの影響ももたらさなかった。原材料や部品、それに製品の流れの管理は、もちろん無視していいような業務ではなかったが、それが市場での成功と失敗を決めるような事態になることはなかった。
しかし、製品のライフサイクルが短くなり、品種の数は増える一方で、流通業者の力も強まり、技術の変わり方も激しい今日では、ロジスティックスでの統制力が競争に勝つための必須の要因になっている。
本稿の著者がはっきり示しているように、おそまつな管理のもとにおかれたロジスティックス・システムは、あらゆる種類の問題を次から次へと引きおこすものである。しかし、1つのアプローチあるいは1つの解決策がすべての企業に使えるというわけではない。したがって、経営者の課題は自社のシステムに求められる相反する要求の内容を理解し、3つの打ち手(現在のシステムの効率向上、システムの作りかえ、システム運営方式の変更)のなかから自社に合った最良の改善策を選ぶことである。
問題のあらわれ方が変わってきた。しばらくなかったことだが、有力顧客が電話で品切れや納期遅れの苦情をいい始めたのである。社長が最高責任者として、その問題点を調査してみると、完成品の在庫量が過去3年間ではなかったほど多くなっていたり、原材料の調達から完成品の納入までのリードタイムが、生産と配送に要した時間の何百倍にもなっていたり、受注がほんの少し増えただけで工場の生産体制が混乱したり、新製品の発売が競争相手よりも何ヵ月も遅れているといった事態になっていることが判明した。
これまでロジスティックスには何の不安もなかったのでそれが気になって夜も寝られないということはなかったが、いまやこの社長の眠りは、浅いものになりそうである。各社の経営者も最近でははっきり認識し始めたが、顧客、卸売業者、小売業者ともに知識が豊富になり要求水準も高くなってきたので、企業の提供するサービスに対する不満感が強まっており、それとともに、この不満感を企業にわからせようとする意向も強くなっている。このような事態に直面したために、やむなくここ数年来はじめて自社のロジスティックスを細かく調べるはめになった経営者は、そこにさまざまな問題点を見つけることになるのである。
ロジスティックス・システムにおける問題点の根は深く、ロジスティックス以外の業務とも密接に関係している。以下にその理由をいくつか示す。
□ 数多くの業界で見られることだが、製品のライフサイクルが短くなっている。例えば、ホーム・ミュージック・システムやカーラジオのようなオーディオ機器のライフサイクルは過去10年ほどの間に数年から数ヵ月にまで縮まってしまった。極端な場合には、メーカーでの材料調達から出荷に至るリードタイムよりもライフサイクルのほうが短いというケースさえ生じている。単品種を大量に生産するやり方をとることで徹底的なコストダウンを達成してきた企業は、いまでは陳腐化した在庫をかかえこみ、競争相手の新製品攻勢に太刀打ちできなくなっている。
□ 品種が多様化している。顧客の嗜好と要求はますます多様化しており、これらを満足させるためには、より多くの品種が必要になる。したがって、流通サイドとメーカーサイドの在庫量は必然的に多くなってしまう。コンピュータによる生産管理システムを持っていない工場では、そのほとんどのところで、組立てラインの変更コストと少量生産によるコストが、同時に増えていくという事態をまねいている。
例えば、医療機器の分野でみると、1970年代には従来のX線技術を補い、それにとってかわるものとしてコンピュータ利用の断層撮影技術や超音波、放射線磁気共振技術あるいはデジタル・レントゲン技術が開発されてきた。このように多様な技術をもとに多数の製品が発売されたために、あるメーカーでは部品の数が1976年の3倍にもなり、売上に占める在庫の比率も大幅に増え、機器の据えつけは遅れ、コストも増大していたが、これらのことに気がついたのは、ようやく1981年になってからであった。これを正常に戻すためにはロジスティックス・システムの完全な解体修理と再構築ならびに1億ドルにもおよぶ在庫の削減が必要であった。
□ 流通段階におけるパワーの主体がメーカーから販売業者へと移り変わっている。例えば、カラーテレビの市場を考えてみよう。10年前までは、ブランドイメージと製品特徴が購入の有力なきめ手になっていた。



