多くの職業にとって、マーケティングの考え方は伝統的になじまないばかりか、不愉快でさえあった。つまり、有能な医師・弁護士・建築家・コンサルタントなら、なにも商売のために駆けずり回る必要はないのではないか。こういう考えが、まだ大勢の人の心に根強く残っているものの、現実の経済力の前では、次第に色あせようとしている。多くの職業が過密になってゆくにつれ、顧客争奪戦は激しくなるばかりだ。客に好意をもってもらうために、彼らは何から始めたらよいのだろうか。

 著者がいうには、まず彼らは、自分の業務をマーケティングする際に直面する特殊な問題を認識しなければならない。その場合の障害となる問題として、サービスを受ける買い手の不安、専門機関を差別化することの難しさ、広告効果の不可測性などを指摘する。また、提案として、サービス機関はサービスの機会とその限界について見込み客を教育する努力を怠らないこと、必要な経験をもっている他の人間と一致協力すべきこと、顧客の欲求を把握してそれを満たすためにマーケティング・リサーチを実施すること、などを挙げている。

 つい最近までは、カントリークラブでのつき合いを大切にして、そこでよい評判をとってさえいれば、プロフェッショナル【訳注】は次から次へと顧客や患者を見つけることができた。ところが今日では、弁護士・会計士・経営コンサルタント・建築家・技術者・歯科医その他の開業医、あるいはその他のプロフェッショナルたちにとって、開業や営業を続けるために、大がかりなマーケティングが必要となっている。

 ここ数年間を見ると、このような傾向は一層強くなっていて、そのなかには次のような状況も含まれている。

 1. 法的認可 有名ないくつかの裁判によって、広告のように以前は禁止されていたマーケティング手段が認可されるようになった。

 2. プロフェッショナルの過密 法律・建築設計・歯科その他の業界は著しく過密となり、顧客の争奪戦が次第に激しくなった。

 3. 公共イメージの低下 消費者保護運動と医療過誤の時代となって、プロフェッショナルはもはや尊敬の対象ではなくなった。このような状況の下で、彼らは公共イメージを向上させ、顧客や患者を一層満足させるためにマーケティングを活用しなければならなくなったし、また皮肉なことにそうしたほうが喜ばれるようになった。

 このような事情のため、プロフェッショナル・サービス機関の多くはマーケティング競争の場に立たされている。

 あらゆる種類のプロフェッショナルが、今では積極的にマーケティング手段を活用する。例えば、どの新聞・雑誌や職業別電話帳をとってみても、弁護士・歯科医・検眼士・会計士の広告が目白押しだ。また、大通りに面して作られた法律事務所・歯科クリニック・税金相談所なども、郊外ショッピング・センター風景の一部として当たり前になってきた。さらに、ニュースレター(会報)・新聞発表用資料その他のPR手段も、会計士・法律・建築・技術設計・経営コンサルタントの事務所において広く活用されている。そしてまた、あまり目には触れないものの、あらゆる種類と規模の知的サービス機関によってマーケティング・リサーチと戦略計画が実施されていて、しかも次第に増えているのである。

 競争が激化するにつれて、多くのプロフェッショナルたちは、従来のマーケティングに対する知識では壁にぶつかることに気づき始めた。つまり、歯磨やコーンフレーク類その他の有形製品を販売する企業、さらにはある種のサービス業で用いられるマーケティングの概念や手法は、そのまま知的サービス業に応用できないということである。確かにこういったサービスのマーケティングは、異なっているのである。