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過去数年間にわたって、数多くの研究者か日本のメーカーの目を見はるような成功の理由を説明してきた。日本企業のすばらしい業績はその独特の文化的歴史的要因によると分析した人もいるし、国際的な競争力を強化するためにとられた先見の明ある機敏な政府の政策によるという人もいる。
本稿の著者は日本のエレクトロニクスメーカー5社の経営方針とウェスタン・エレクトリックの方針とを比較調査して、日本企業が非常に高い生産性を達成している理由を明らかにしている。それらは単純明解なもので、高い生産性の達成を促進するために作られた人事方針および投資方針のゆえであることがわかった。
過去5年間にわたって、私はウェスタン・エレクトリックでの生産性を研究してきた。同社はアメリカのエレクトロニクス企業のなかではIBMにつぐ大企業である。この研究期間中に私はしばしば次のような質問を受けた。「アメリカの労働者に比べて、日本の労働者の生産性はなぜあんなにも高いのか」、「アメリカの企業は、どうすれば日本企業なみの高い生産性を達成できるのか」。本稿は、これら2つの質問に答えようとするものである。
ここではウェスタン・エレクトリックの従業員の生産性と、日本の大手エレクトロニクス企業5社、松下電器産業、日立製作所、富士通、日本電気、三菱電機での生産性を比較する。生産性の比較分析の対象をエレクトロニクス業界の大企業だけに限定したことで、次の2つの利点が生じる。すなわち、あらゆる産業分野において、すべて日本のほうが生産性が高いのではなく、全体としてみると日本の労働者1人当たりの平均生産高はアメリカの4分の3以下である。したがって、単一の業界ではなく産業全体のデータをもとにした比較分析では、誤解をまねくおそれがあるという点が1つ。もう1つの利点は対象企業を同一業界に限定することで、アメリカ経済と日本経済との間の構造的な相違によってもたらされるデータ上でのゆがみを少なくできるという点である。例えば、サービス志向型の経済と製造志向型の経済とでは、たとえそれらの産業部門の構造が同じであっても、そこでの生産性の変化率は大きく異なると思われる。
アメリカに比べて日本の労働者の生産性が高い理由として、文化の違いをあげる人が多い。しかし、これは正しくない。ウェスタン・エレクトリックの従業員に比べて、日本企業の従業員のほうが欠勤率が大幅に低いとか、中途退社者が少ないとか、よく働く、という事実はなかった。
現実は、日本の経営者がとったいくつかの単純明解な経営方針の結果として、高い生産性が達成されているのである。アメリカの企業でも、これら日本企業と同じ方針をとることはできる。現に、ヒューレット・パッカードは日本企業と同じやり方を採用している。
日本企業の高い生産性についての神話
それではこれから上記5社の日本企業における高い生産性の根拠を検討してみる。企業秘密の関係でデータを出してくれた具体的な会社名の代わりに、A、B、C、D、Eという符号を使うことにする。
神話1:アメリカよりも欠勤率が低い
表1は、ウェスタン・エレクトリックとA社の欠勤率を比較したものである。これら両社での欠勤率の計算方法は同じである。A社は毎年3週間、工場の操業を停止し、この休暇以外の期間の欠勤日をもとに欠勤率を算出しているという点で、日本企業のなかでは例外的な存在である。ほかの日本企業は従業員に与えられている休暇期間も欠勤日として計算している。表1で明らかなように、ウェスタン・エレクトリックの欠勤率はA社よりも低いのである。
神話2:アメリカよりも企業への忠誠心が強い
日本の労働者はアメリカの労働者よりも勤務先の企業への忠誠心が強いので、それが低い中途退社率をもたらしているといわれている。しかし女子労働者には、このことは当てはまらない。




