本稿は、1967年の9-10月号(HBR)に掲載された。編集部では、本稿が長い期間、高い評価を受け続けてきた実績により、"HBRクラシック"に選び、再掲載する。いまもって、本稿の抜刷りを買いたいというリクエストが多数寄せられている。

 本稿が引き続き高い評価を受けている事実は驚異的である。なぜなら、1960年代に、本稿が描きだしたすぐれた経営者像はまさに異端であった。この著者の描くすぐれたゼネラル・マネジャーは、好機を逃さない人物であり、詳細な企業目標や長期マスタープランなどを示すことのない"こねまわし屋"である。またポリシーを公式文書として示すこともない。現業上の問題にも個人的に積極的に取り組んでいく。

 回顧的コメントでは、著者は自らの理論の現実への適用を議論しており、彼の描くすぐれた経営者の要件を忠実に実行しても、なお多くの経営管理者がダムから洗い流される可能性のあることを指摘している。

 経営の上層部の世界は、外から見ると神秘的で、しかも興味をそそる世界である。非常に少数の人たちしかその世界へ到達しない。また、現在、経営の上層部を占める人たちは、経営の下位レベルの人たち、あるいは一般人には理解しにくいメッセージをたびたび送りつけてくる。

 経営層についてじかに調べた報告がないことから、経営の文献に、広範に述べられている神話、幻想、皮肉が生まれてくるのであろう。例えば、次のような概念がその代表である。

・経営のピラミッドの最上位に至ると、経営管理者の生活は複雑さが減ってくる。

・トップを占める経営管理者は、組織内で現在起こっている事柄はなんでも知っている。必要とするリソースはどんなものでも入手できる。その結果、確固たる決断ができる。

・ゼネラル・マネジャー(組織の責任者)の1日はまず、一般的なポリシーづくりに励み、さらに明確な目標を設定していくことに費やされる。

・経営トップ層の主要な活動は、長期経営計画を概念化していくことにある。

・大企業のトップは、その企業の社会における役割を調整していく人物である。