製造業者のなかには、サービス業に進出するなとという考えは、まるで未開発地域へ旅にいこうという呼びかけにも等しいような気がするものもいるだろう。しかし、よく検討すると、サービス事業には製造業者が新しい機会を見いだす可能性のあることが分かってくる。そのうえ、進出とはいっても、現在もっている資産・資源・知識を活用すれば十分なことが多い。ボーグ=ワーナー社は、そのような方向転換を実行した、多くの保守的な製造業者の1つである。

 著者はここで、新規サービス事業において新たな成長と利益を手に入れるために、機敏な製造業者が自社の力を活用する際に示した10の方策(買収は別にして)を明らかにしている。

 ボーグ=ワーナー社が初めてディーラー在庫のための融資を行なおうとしたとき、この措置はあたかも「当社の創業者にはまるで理解できない、完全な新世界」同然であった、とボーグ=ワーナー社の社史はしるしている。「経営者はこれまで、金融会社をもちたいと望んだことは一度もなかった。器具(つまり、失敗に帰したノルゲ部門の)は確かに奇妙なものだったが、それは少なくとも"製造した物"だった。だが、金融となると形がない――それにボーグ=ワーナー社の人間は、借金というものに本能的な嫌悪を感じていた」のである。

 しかし、ノルゲ器具部門が行き詰まってしまったので、同社はディーラーや流通業者の脱落を食いとめるため、最後の必死の試みとしてボーグ=ワーナー手形引受会社(B-WAC社)を設立した。B-WAC社は、ディーラーの在庫用資金を融通し、競合他社にはまねできないほどのサービスと奨励制度を実施した。だがその努力もむなしく、ノルゲ部門の再起はかなわず、B-WAC社も売りに出されることになった。

 ところが、会社の買い手を探しているうちに、ボーグ=ワーナー社はディーラーがこの事業を高く評価していることに気づいたのである。ディーラーたちは、他メーカー品の在庫融資、また、受取手形割引にもB-WAC社を利用することを望んでいた。のちには、農器具など他の業界のディーラーも契約に加わった。

 やがてB-WAC社はいっそう発展して、設備リースや個人の信用・保険に対する融資も行なうようになった。

 これらを土台にして他のサービス業務を拡充することにより、ボーグ=ワーナー社は現在の企業目標、つまり「平常年(景気後退時を除く)において、製造業による収益と等しい収益をサービス業から得る」という目標をほぼ達成した。

 もっとも、ボーグ=ワーナー社の経験が、サービス業へ戦略的な転換をはかるための手本というわけではない。サービス業に参入したのは、全くの偶然にすぎないと、同社は公然と認めている。確かに、経営者の反対について率直にのべた記述を読むと、製造業者がサービス事業を好きになることは、いかに至難の業であるかがよく分かる。しかし、いったんサービス部門に参入したとなると、工業会社は容易に成長し、利益をあげ、うまくいけば安定した地位を得ることができる。製造の分野ですでに成熟期に達し、それ以上の成長がむずかしい場合、ことに安定は望まれるところだ。

 これまで製造業一本で生きてきた管理者は、サービス業に賭けるなどという考えは起こさないし、起きても気に入るものではあるまい。しかし、アメリカのように、製造業はGNPの20%、そしてまた職業構成のおよそ20%にまで落ちこんでしまった経済、さらに今後10年間に生まれる、新しい7つの職業のうち6つまでをサービス業が占めると予想されているような経済下にあっては、これこそ賢明な転換というものであろう。

 しかも、ボーグ=ワーナー社の例でも分かるように、サービス業への転換は可能だし、有利でもある。他の工業会社の管理者にとって転換をたやすくするようにとの意図から、本稿では、いくつかのメーカーが参入したサービス業の種別と、いかにそれを達成したかという面に焦点を合わせた。