アメリカの産業界を戦場とする競争は、企業にとっては危険なまでに激しくなってきたので、経営者は物流システムに再び目を向け、競争上の有力な武器になる可能性を持つものとして頼りにし始めた。そして物流システムは必要ではあるが、装置類の寄せ集めのやる気をおこさせない代物であるという見方は捨てている。物流システムへのこのような注目はむしろ遅すぎたといえる。なぜなら、うまく設計されたシステムが企業の戦略目標の達成に寄与できる可能性は大きいし、逆におそまつなシステムが戦略達成のさまたげになるおそれも大きいからである。

 著者が実証しているように、新製品、顧客サービス、低コストを焦点にした戦略は、その企業の物流体制と適合しておらず、しばしば逆の方向を向いていることも多い。例えば、顧客からの製品の迅速な配送要求を満たすことを最優先にすれば、ある企業には大きな効果をもたらしても、別の企業には破滅的な結果をまねくかもしれない。経営者の責任は、昔から少しも変わらないが、自社が何をしようとしているのかを正しく理解し、その目標に合わせて自社の物流体制の能力を発揮させることである。

□ ここ数年間、競争上の地位も利益額も低下の一途をたどってきたある耐久消費財のメーカーが、その物流システムを再編成した。この再編成は、配送センターの集約、製品在庫量の50%縮減、購買および原材料管理部門の一元化、トラックと鉄道を組み合わせた複合輸送への転換、注文量をトラック1台単位にまで増やしてもらうための価格だての変更を含むものであった。

 この再編成は会社の顧客層を変える働きをした。すなわち、少量を発注し、しかも"必要な時"に即時の配送を要求するディーラーから、より安い価格での大量発注のほうが得になると考えるディーラーへと変わってきたのである。最初は、短期的な利益は増加したもののマーケットシェアは低下した。しかし、2年後には受注量が増加したので、利益水準は高いままでマーケットシェアも増え始めた。

□ 1970年代の中ごろのことであるが、金属製品の卸売業者(加工から配送までを行なう流通サービスセンター)は、取扱い製品を限定して1ヵ所の配送センターから地域全域に販売している大規模卸売業者だけでなく、小規模な地元の業者からも激しい攻撃を受けていた。これらの攻撃に対抗するために、この卸売業者は配送拠点数と製品在庫量を増やすと同時に各配送拠点の受持ちエリアを縮小し、それによって即時配送の実績を高めたのであった。さらに、この卸売業者は取扱い製品の品種を増やして、顧客のどのような要求にもこたえられるようにした。

 物流システムをこのようなかたちに変えるとコストアップになるが、多頻度にわたって少量を発注する顧客や、その金属製品の発注額が全体のコストのなかでは小さな割合であるために特別割増価格を支払ってもよいと考えている顧客層では、高いマーケットシェアを獲得できた。

□ これもまた1970年代の中ごろのことであるが、さまざまな使い捨ての医療用品(カテーテルなど)の業界は急激に成長していたにもかかわらず、あるメーカーの伸び率は、これに追いつかない状態になりつつあった。取扱い製品を増やしすぎたことと、20以上もの配送センターのある広がりすぎた配送ネットワークの管理がいきとどかなくなったことの2点が、この会社の中心的な悩みのたねであった。過剰在庫が利益を食い荒らしたうえに、しばしば発生する品切れのために怒った顧客は競争相手へ流れていった。そこで、経営者は配送センターを4ヵ所に集約・統合し、これによって製品の在庫総量の削減と品切れの防止をはかったのである。同時に、大部分の配送を航空利用に切り替え、顧客の注文に迅速に対応できるようにした。

 この統合は単にコスト削減と効率向上の手段であるばかりでなく、需要変動が激しい市場で急激に変化する取扱い製品をうまく管理するための手段としても有効である、と経営者は考えていた。この方針変更は顧客にも受け入れられ、この会社の伸び率は急速に業界全体の水準に戻った。

 ここでとり上げたそれぞれの会社は、どれも物流システムを利用して競争上で有利な地位を占めようと試みたわけである。そのやり方は会社によってまちまちであったが、基本的にはある選ばれた競争戦略にうまく"適合"するように物流システムとその運営方針を設計したのであった。この"適合性"こそが、本稿のテーマである。

 ウイカム・スキナーの"集中化工場(1)"の考え方についてもいえることであるが、物流システムにおいても何もかもうまくやれる万能のシステムなどはないのであって、長所があれば必ず短所もある。例えば、低コストとサービス水準と変化に対する柔軟性(製品仕様や需要量あるいは顧客の選好の変化)の間には必ずトレードオフの関係があって、3つを同時に満たすことはできない。したがって、経営者にとっての重大な問題は"当社の物流システムが特に効果を発揮するのは、どの競争戦略をとった場合なのか"である。