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米国企業のエグゼクティブのなかで国際ビジネスに明るい者はあまりいない。海外ゲームのルールは国内に比べて仕掛けが多く、勝てるチャンスがすり抜けてしまう。そこで、マネジャーたる者とかく国際販売をいっさい無視してしまおうとする。しかし、今日の経済風土のなかで国内市場への販売だけで十分という余裕ある企業は少ないはずである。
国際ビジネスの情景のなかで、エグゼクティブがとりわけ気の遠くなるほどとつつきにくい一面があるとすれば、それは交換貿易(countertrade)、つまり、バーターである。交換貿易は元来、マネジャーの販売活動を助けるだけでなく、低コストの資材調達、深刻な負債状況の解消、顧客関係の改善への道を開くものである。この種の商品と商品の交換(商品とカネの交換でなく)は、もつれた糸のように複雑で、著者が指摘するごとく、往々にして関係した企業に損失をもたらすものである。
しかし、著者が紹介したいのは、このようにどうみても難題山積といった状況を巧みにプラスに転じさせた企業事例なのである。エグゼクティブが落とし穴さえしっかり気を付ければ、観測筋にいわせれば世界ビジネス2兆ドルの30%に匹敵するとされるこの市場を十二分に活用できるのである。
バーターが帰ってきた。企業、国家が当たり前のように硬貨で支払いをせずに商品を取り変えている。いうまでもなく、交換貿易(バーター的活動を国際的舞台では、こう呼んでいる)は、こと新しいものではない。60年代以降、共産圏は西欧多国籍企業相手の取引きにこれを要求してきている。先進工業国家でさえも大型軍事物資調達に際しては、かなり以前からそうすることを望んできた。
今日の交換貿易が以前のと異なる点は、その規模である。共産世界の国家間バーターを別にしても、グローバルな交換貿易の年間貨幣価値は1000億ドルの規模に達しているといってよい。アルゼンチン、オーストラリア、ユーゴスラビア、ザンビアなど国際的物資調達に際して交換貿易を至上とまでいかなくとも重要な検討項目としてきた国家は、30ヵ国ぐらいはある。OPEC系国家はとにかく何でもバーターと意欲的に取り組んでいる。一部の新興産業国家のなかには交換貿易を要求し、これに応じない相手には往々にして厳しいペナルティを課している。貧困の極にある国家でさえ輸出入バランスを保つためにバーター的処理をしている。
伝統的な決済方法を譲らぬ国際企業のマネジャーたちは徐々に国際貿易戦争で後退するかもしれない。新しい国際的環境に順応していくタイプなら交換貿易を自分にプラスになるよう生かすことができる。
□ ゼネラル・エレクトリックが日立、シーメンスを始めとする企業を制してルーマニア向け1億5000万ドル相当の発電機プロジェクト入札戦争で勝てたのは、技術やコスト上で大きなメリットを相手にもたらしたからではなく、あくまで1億5000万ドル相当の同国商品の販売を引き受けたからに他ならぬ。
□ クライスラーは82年型トラックのジャマイカ向け販売契約を完了させる前提として、同国のアルミニウムをトラック販売にみあう分だけ輸出するための仲介業者を手当てしなければならなかった。
□ 200億ドル、20年間という長期大型契約を締結するにあたって、オクシデンタル石油はロシア向け燐酸肥料の長期安定販売を確実なものにするために、ソ連製アンモニアの西側への販売を引き受けることになる。
厳しい世界市場のなかで販売を伸ばそうとする国家、企業は交換貿易が国際貿易にからむ障害の解決策として役立つことに気付いている。もちろん、この商業活動に落とし穴があるのはいうまでもない。いかなる形態のものであれ交換貿易は、このうえなく複雑でコストがかさむものである。取引き成立までの交渉プロセスが神経を痛めつけるし、初期の交渉段階で決裂してしまう取引きも少なくないのである。交換貿易契約の締結後に損害をこうむった企業も数多い。交換貿易に不慣れな向きは価格設定、妥当な交換商品の認定、引き受けた製品の販売といった段階でトラブルを起こしてしまう。



