コンピュータ応用技術は、オフィス後方での支援という限定的な役割を脱して、競争を有利にする新たな機会を提供している。企業がこのコンピュータ応用技術を活用すれば、例えば参入障壁を築いたり、顧客側が取引先を替えようとすれば自ずとコストを負担せざるを得なくする機構(取引先切換コスト)を組み込んだりすることができ、時には基盤的な競争条件を変えてしまうことさえ可能である。

 本稿の著者は、ある企業がいかにして優位性を確保しえたのか、そしてその一方で現状に甘んじていた企業が先行企業に追いつくための困難で費用のかかる闘いをあきらめてしまったのは、なぜかを明らかにしている。著者はまた、情報システムが適合するのは自社のどの分野かを経営管理者が評価する際には、この競争に関する分析が重要であると指摘している。それは、情報システムは、ある場合には支援的役割を果たすのがふさわしく、また製品価値にほんのわずかなものしか付加しえないが、別の状況においては、企業が生き残るための核心的条件になるからである。

 こうした枠組のなかで自社がどこに位置しているかを理解すれば、CEOが支出の適正な水準や情報システムに対する適切な管理構造を決定する際に、大きな助けとなりうる。

□ ある大手ディストリビューターは、顧客サービスに関する問題の解決を目的として、オンラインによるネットワーク・システムを導入し、大口顧客が注文を直接コンピュータに入れられるようにした。このコンピュータ導入の大きな目的は、受注業務コストを削減し、注文受付の時間と手続の面で顧客に柔軟な対応をすることにある。このシステムは、大きな競争上の優位性を生み出し、顧客の評価の向上と売上げの大幅な増加をもたらした。その結果、このディストリビューターのマーケット・シェアは著しい拡大をみせた。これに対して最右翼のライバル企業は、損害を防ぐために組織の再編成を迫られ、またシステム開発に向けて多大の努力を払わざるを得なくなった。しかしこのライバル企業の当然の行動も、部分的な成功をみるにとどまったのである。

□ あるローカル航空会社は、全米的規模をもつ大手航空会社の予約システムによって重大な損害を蒙っていることを米国議会で証言している。ローカル航空会社の主張によれば、このシステムを通じて、大手航空会社は小企業であるローカル航空会社の全フライトの予約状況データを入手することが可能であり、その結果、ローカル航空会社が順調な業績をあげ、対抗的な価格設定とサービス提供を行なっている競合路線すべてを狙いうちすることができる。これに対してローカル航空会社の側は、大手のデータを入手する手段をもっていないために、競争上、決定的に不利な立場に置かれていると主張している。

□ ある大手航空機会社は、自社が導入しているCAD(computer aided design)システムに直接結合しうるCAD設備を購入するように、主要な部品供給企業に要求した。この会社の主張するところによれば、CADシステムによって、設計変更、部品調達および在庫のトータル・コストと時間の大幅な削減が達成され、その結果、競争力の向上がもたらされたのである。

 以上の事例は例外的なものではない。情報システム(IS)技術(例えばコンピュータ、端末装置、遠隔通信(1))のコストの目覚ましい低下によって、コンピュータ・システムの利用分野は、後方支援から上記のような競争上の優位性を確保するうえで重要な意味をもつ分野へと急速な拡大が可能となってきている。そうした意味でとくに目立つのは、部品購入企業と供給企業とを結びつけるシステムである。この種の結合によって、競争上優位に立つ機会が得られるが、しかし同時に、戦略的弱点も生み出される上記航空機メーカーを例にとれば、取引手続きの大幅な改善は可能となったが、その代償として相互依存性はぬきさしならないほどに強いものになった。航空機メーカーにとってみれば、部品供給企業を替えることが極めて難しくなってしまったからである。

 多くの場合において、新しい技術は、企業が資源を再配分し、戦略を練り直すための唯一のきっかけとなっている。技術は、マーケット・シェアの絶えざる拡大のための強力で新しい道具をつくりあげる可能性を企業に与えている。

 このような機会や可能性は個々の企業それぞれによって異なる。それは、産業ごとに競争の激しさやルールが異なっているのと全く同じことである。同様に、企業の立地、規模、基盤的な製品技術もまた、情報システム技術適用業務のありうべき形を規定する。コンピュータの発展は、小規模の企業にまで影響を与えている(最近の例を挙げれば、600万ドル規模のある電子部品メーカーがCAD技術を導入し、成果をあげている)。さらに別の側面からみれば、企業はリーダーになるか、あるいは抜け目のない追従者になるか、それぞれにふさわしい道を選ぶことになる。しかしその賭金は極めて大きなものになるはずであり、したがって、よく計画された確かな意思決定が行なわれなければならない。

可能性を求めて

 情報システム技術が究極のところ会社にどのような影響を及ぼすかを判断する場合には、以下の5つの質問に答えることが必要である。この5つの質問のうちの1つ、あるいはそれ以上にイエスという答えがでるならば、情報技術は最高度の関心を払うべき戦略的資源である。