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世界経済が、信じられぬほど安定した1950年代と60年代初頭から不安定な70年代に移行するにつれ、多くの国際的企業ならびにその経営者は、その不安定性の影響を非常に受けた。国際的企業ならびにその経営者は、温室でビジネスを成長させてきたが、ある日突然襲った嵐により、これまで細心の注意を払って育ててきた畑をめちゃくちゃに荒らされてしまった。
したがって、企業経営者は彼らの国際戦略の一部にリスク・マネジメントを入れるようになった。エクスポージャー・マネジメントが注目されたにもかかわらず、企業の多くは、国際市場における予期できぬ状況に対応するための高度の戦略をいまだに持っていない。
本稿において、財務の専門家が長年国際市場で培った経験を読者に提示する。ここで示されるエクスポージャーの方法に対する実践的な手引きによると、神聖と考えられる多くのことが崩れ去り、より革新的な手法が成功に導いてくれる。
今日の世界で、神聖なものは何もないといってもよいだろう。ジスカール・デスタン、ポンピドー、ドゴールのフランスがミッテランのフランスに容易に変わりうるのである。これまで神聖視されていたカントリー・リスクに対する考えは、今評判が悪い。この考えにのっとって、商業銀行は、プライム・プラス0.5%の率でポーランドのような国に貸し付けてきた。ポーランドのような共産体制の国は、その強い統制力で破産するとは考えられなかったため、このような率で貸付けが行なわれた。このことから、国際企業が収益を維持するには、政治・経済・金融リスクを配慮した、いわゆるエクスポージャー・マネジメントを成功させる以外に、重要なことはないことがわかる。
リスクをとることは、どのビジネスにおいてもその一部であることは当然である。しかし、未知の要因が多いためで、国際ビジネスのほうが、国内ビジネスよりもたえず大きなリスクに遭遇している。最近になって、多くの企業は、日常のビジネスの複雑性と同じようにリスクの程度も増大していることを自覚するようになった。
多くの企業は、長年の経験があるにもかかわらず、リスクに対するエクスポージャー・マネジメントの適正な手引きを持っていない。多くの企業は、これまで使用してきた手法にのみ頼るだけで、自らの経験を参考にしていない。彼らは、企業外の組織が秘密の定式ないし料理ブック的な解決法を提供してくれると考えている。例えば経営者は、投資対象国ないし事業計画国を決める際に、安易に一般のリスク評価に頼ってしまう。しかし、このような評価は、成功するために必要とされるようなきめの細かい高度の情報を提供していない。いずれの国にも、収益を生む可能性とともにリスクがある。違うのは、リスクの程度である。
外部の組織や指数は、基本的情報を提供するにすぎない。したがって、経営者は、どのようにその基本的情報に自らの経験を加味するかを工夫しなければならない。重要なことは、コンサルタント会社や評価会社がよい実績を収めていないということである。最もよい例は、メキシコの平価切下げにおける私の最近の経験である。1982年の初めに、11人の専門家に意見を求めた。ほとんどの人がポルティーヨ・コルベックを信頼し、ペソはたかだか18%しか切り下げられないと予想した。実際の切下げ率(50%、1982年2月17日)を予想したのは、ただ1人であった。
企業が堪えられるリスクの程度とそれに伴う収益性を決めるために、経営者は、事業を行なう国のリスク要因を理解するとともに、それぞれをいかに処理するかの手法を開発しなければならない。
企業としては焦点を明確にしぼらねばならず、その対象は全世界投資と収益率を守る責任である。世界には機会はあるものの、それは非常に限られたものであり、迅速な参入を要求される。しかし、面倒な官僚機構はない。責任は企業自らにある。企業の上層部のラインにある経営者がかかわってくることが重要で、これがないと最高の計画も実施の段階で失敗する。
以下での説明は、私の国際ビジネスの経験に基づくもので、政治・経済・金融リスクを緩和することを目的とした戦略を成功裡に実施するために必要な種々の手法のガイドとなる。



