サービス産業がわが国のGNPに大いに貢献しているのに、新しいサービスの開発に合理的な経営技法を応用しようという提案は、ほとんどなされていないといってよい。優れたサービスは企業それぞれの流儀が生み出すものだから、企業の持ち味が強くにじみ出たものだと思い込んでいる人が多いのである。

 著者は、サービス企業とかかわりあった長年の経験から、経営者がサービスの開発をもっと詳細な分析と管理にゆだねるべき時がきたと考えている。実施にすぐ役立つ本稿が説いているのは、サービス開発の担当者がブループリントを利用すれば、問題を具体化する前に発見でき、また新しい市場機会にも恵まれていることに気づく、ということである。

 このブループリントという技法が一番役立つのは新しいサービスの開発に取り組んでいる経営者であるが、それ以外の人でもこの原理を応用して、担当しているサービスの質が妥当か確かめることができる。

 サービスがよくない例には、皆なれっこになっている。洗濯屋から戻ったワイシャツのボタンが割れている。目の玉の飛び出るような修理代を支払って1週間もたたないのに、自動車のエンジンはまたぞろ不吉なガタガタ音をたてはじめる。顧客サービス係はすぐ戻りますといったきり、2度と姿を現わさない。銀行では自動支払機がカードをのみ込んでしまう。

 世の中にはサービスの悪い例ばかりあふれているので、どの調査でも消費者の不満のトップを占めるのは、いつもサービスである。H&Rブロック社の納税対策、マクドナルドのファースト・フード・サービス方式、ウォルト・ディズニー流の娯楽、こういったアイデアが世に現われることはめったにないので、天才の所産、凡人には真似のできない才気のひらめき、と思われている。

 サービスという問題になると、皆思い込みがすぎるようである。客にしてみれば、客扱いを知らない奴がいる、ということになる。経営者は素直にいうことを聞かない従業員が問題を起こしている、と考えている。客や経営者がやんわりとおどしをかけてみるのが、事態改善にまずとられる手段であることが多い。これが効を奏しないと、とげとげしい雰囲気になりかねない。こうした改善方法に頼っていては、効果の持続する根本的対策に目を向けなくなってしまう。たとえ従業員の能力不足が原因とはっきりしていても、それだけにねらいをつけていては、さらにその奥にある原因から目をそらしてしまうことになる。サービスを体系的に計画し管理する方法がない、ということである。

 新しいサービスの開発には試行錯誤がつきものである。計画担当者は頭のなかに描いたニーズをサービス活動という形に具体化するわけだが、もとのアイデアとは似ても似つかぬものになるおそれもある。しかし誰もプロセスを数量的に示すとか、チェックの方法を工夫するとかして、サービスが落ちることなく合理的で、ねらったニーズをあやまたず満足させるようにしようと体系的に試みる者はいない。研究開発部門、研究所、サービス・エンジニアのなかにも、サービス計画とはどういうもので、どう監督して作らせればよいかを考える者は1人もいない。細部にわたる計画がなければ、サービスの質や均一性を保証しようもない。断片的に品質管理が行なわれていることもあるが、これとてもサービスの一部に目を向けているにすぎない。サービス・システムを細かく分析したうえで計画を立てていない理由は、いくつかある。サービスは影響は与えても実体のないものだから、一風変わっているといえる。そのまま貯蔵したり自分のものにできないし、生産即消費ということが多く、こういう点では光に似ている。

 サービスは、物品や立派なマナーと取り違えられている。しかしサービスは手にとれる物ではないし、自分のものにもできない。ホテルの一室を料金を払って利用しても、持ち去れるものといえば一夜の体験だけである。空の旅をする時、飛行機が運んでくれるが、飛行機は自分のものではない。きちんと綴じられた報告書がコンサルタントの製品のようにもみえるが、顧客が金を支払ったのは紙とインクに対してではなく、知的能力と知識とに対してである。

 サービスは召使とも違う。人手で行なわれるとは限っていない。人手でサービスという方法がとられていても、人手だけで、すべてをこなせるわけではない。

 きわ立ったサービス企業では、当初のサービス方法を一歩もふみはずすなと管理者の頭にたたきこむ。この天才の所産なくして事業は成り立たないとの信念から、それをほとんどそのままの形で維持しようと努める。管理技術者を連れてきて、定量的にとらえ、現在の形を維持したまま効率を上げようとする。何冊もの方針集や手順書を作り上げて、手順を成文化する。こうした方法で優れたサービスというものの輪郭をとらえることはできても、手順とは、しょせん文字でほとんど書き表わせない包括的な事象をばらばらに分解したものにすぎない。サービスの管理を巧みに、しかも長続きさせるにはこれだけでは足りない。もっと優れたサービスの計画なくして市場での成功も、もっと大切なことだが成長も、おぼつかない。