マーケットシェアの拡大で利益を向上させる戦略がよく推奨されるが、現実には、該当しないケースも少なくない。このことは、シェアトップの事業にも、ズバリ当てはまる。

 ここでは、マーケットシェアはトップでありながら、低収益にとじこめられている事業と高収益を享受している事業とを4つの側面から比較分析した結果が示されている。

 シェアトップの座をかちとりながら、はからずも高収益とは無縁な事業にあまんじなければならない理由は、どこにあるのだろうか。

 低品質、高コスト、高価格、低収益の組合せが、その最も極端な回答となっている。

 市場でのシェア第1位なら、儲かると考えるのが自然だが、1位事業がすべて利益を出しているだろうか。1位事業は条件に恵まれている。規模の利益は大きく、生産コストは最も低く、ブランド認知度は高く、流通を支配して、しかも顧客に対してもメーカーに対しても強い立場にある。

 しかしながら、これらの好条件の結果が安定と高収益をもたらすかというと、第1位事業のすべてには当てはまらない。

 例えば、レンタカー市場では、バーツは価格競争および非価格競争の標的にされている。1978年から1982年までの間に、第4位のバジェットが利益を27%ふやしたのに、バーツの利益は合計で1億1000万ドルも減った。他の業界でも、アメリカン・カン、ジョージア・パシフィック、グッドイヤーなどは1株当たり収益では小さな競争相手の後塵を拝している。

 マーケットシェアと収益性との間には強い相関があるのが普通だが、第1位の利点があまねく享受できるわけではないのである。シェア第1位となるためのコストとリスクとを条件として、第1位事業に期待される財務上の成果を妨げる要因を理解しておくことが大切である。

 その要因を明かすために、マーケットシェア第1位の事業112――112社ではない――について調べてみた。そして業績の芳しくない41事業の成果(税引前利益率10%未満)と、好成績の71事業の成果(税引前利益率40%以上)とを対比してみた。カコミの中で研究の手順を概説し、有名なPIMSデータベースについて述べておいた。

研究の根拠

 本研究の標本とした事業は、PIMSデータベースから選んだ。いずれも市場でのシェアは1位である。PIMS(Profit Impact of Market Strategy、市場戦略が利益に与えるインパクト)はマサチューセッツ州ケンブリッジの戦略計画研究所(Strategic Planning Institute)による研究プロジェクトで、会員は2000事業を上まわっている。秘密保持のため社名および業種は公表していない。

 PIMSの事業の定義は"会社の事業部、事業本部またはプロフィットセンターで、明らかに一連の製品あるいはサービスを、他と区別できる顧客群に、はっきりとそれとわかる競合他社との競争のもとで売っているもの"となっている。これらの事業の経営者は売込みの対象とした顧客で市場を表わすことによって、マーケットシェアを推定している。そこにあがっている704の国内製造業のなかから、シェアが下がっている高収益首位事業者と、シェアを上げようと努力している低収益首位事業者とを除外した。

 事業の運営および環境を表すもので本稿の初めのほうで述べた4側面を記述するデータを抽出しようと、たくさんの変数を考えた。市場環境にかかわるものとしては市場の実質成長率、製品および技術の変化度、競争事業者数、競争者の参入および撤退である。製品特性関連では売上に占める付加価値の百分比、特許、付随サービスの重要性である。組織との関連では社内購入の売上げに占める百分比、共通の生産およびマーケティング活動である。競争戦略に関しては他社との比較という意味で、価格、品質、広告量、販売力の大きさ、直接コストの各々の相対値である。

 コンピュータを用いて、各要因について平均と標準偏差を両グループ(成功首位事業と不成功首位事業)の各々について求めた。両者の決定的な差を明らかにするために、要因の平均を統計学的に対比してみた。

 低収益事業を高収益事業群に対して特徴づける要因を決定しようと試みる過程で、事業運営および事業環境にかかわる4側面について調べた。その要因を順に採り上げてみることにする。