製造工場の労働者は、床のくぼみのまわりを歩く。ここには何かが設置される――多分、ロボットだろう――ことは、うすうす分かっているが、確かではない。マネジメントは、口を堅く閉じている。疑念に満ちた従業員は、この何とも分からないものをすでに敵対者とみなしており、ロボットが到着しても、その利用に反対が起こりそうである。

 本稿の著者たちによれば、アメリカではこれまでのところ、ロボットに対する抵抗はごく小さい、ということである。その主な理由の1つは、製造工場のマネジャーは別として、多くのマネジャーは、ロボットの導入にあたっては、従業員を脅かさないよう細心の注意を払っているからであろう。首尾よくロボットを導入するマネジャーは、設置場所を慎重に決め、徐々に行動し、配置転換された従業員を再教育し、ロボットの有用性を従業員に教育し、ラインマネジメントの協力を得、さらに労働組合がある場合は、ロボット設置の進行状況をたえず組合に知らせるといったことに、最大の努力をしている。

 著者たちは、このような注目に値するアプローチを数多く紹介するとともに、アメリカにおけるロボット利用の大要を読者に示してくれる。

 現在、3万台以上のロボットがいろいろな会社で使われている日本では、労働者はオートメーションの進出に対する防衛方法を探し始めている。ざっと7000台のロボットが使われているアメリカでは、ロボットに対する大きな抵抗はいまのところ見られない。多くのアメリカの労働者は、ロボットが行なう暑く、重く、危険でしかも退屈な仕事を明け渡すことを残念がっている様子はない。しかし、程度の高い、しかも興味深い仕事ができる多くの"賢い"ロボットの出現とともに、従業員とマネジメントの間に新しい対立の時代が始まろうとしている。少なくともアメリカの自動車製造工場の1つで、ロボット設置に対するサボタージュが、すでに起こっている。また、ロボット工学界のある大企業のリーダーが行なったロボット利用に関する調査は、「人びとが、新しいテクノロジーはうまくいかないことを立証しようとするにつれて、全従業員の動揺とサボタージュが特徴としてあらわれる(1)」と予言している。

 仕事を奪われるのではないかという懸念から労働者は、ロボットに反対する。ロボットによって置き換えられる労働者はどの程度かということについての評価はまちまちであるが、現在1台のロボットはどこでも従業員1.7人から6人分の仕事を行なっている。基本的に視覚または触覚能力を備えた新世代の"賢い"ロボットは、380万人の労働者にとって代わる可能性がある(2)、とみている研究者もいる。

 結局は、自然減による人員減と、職務機会を非製造業種に移すことが、このようなオートメーション化が引き起こす失業を埋め合わせることになろう。日本を例にとれば、1970年から1981年の間に製造業における雇用は、わずかに7万人の増加であったのに対し、小売、卸売やサービス業における従業員は、520万人も増加している。専門家筋は、政府と民間の双方による計画と訓練により、新しい職務への転換は管理できる、と考えている。2025年までには、現在のオペレーターのほとんどは、その職を離れ、ロボット工学産業そのものが新しい職務を生み出すであろうし、労働界に入ろうとする人びとは、オートメ化されない職務での技術を習得しようとするだろう(3)。

 しかし、このような転換はまだ先のことである。

 さしあたりマネジャーは、完全自動化工場を身近なものにするテクノロジーに対する従業員の懸念と不信感を和らげなければならない。ロボットを工場に集中させるためには、ロボットが引き起こす問題を慎重に考え、ロボットに関する方針を綿密に事前に計画することが不可欠である。

 過去3年間、私たちはロボットを利用しているアメリカの多くの会社を訪問した。ロボット設置の決定から実施に至るまでの彼らの経験は、明日の自動化工場の計画に協力しているヒューマン・リソース(人材開発)マネジャーにとって、貴重な教訓となる。本稿では、そうした会社がロボット導入にあたって直面した人事問題と、対策手段を探っていきたいと考えている。ロボットに焦点をあててはいるものの、ここで提起する諸問題や勧告は、オートメーションの他の手法にも応用できるものである。

ロボット利用の決定

 1981年末、ゼネラル・モーターズ社会長、ロジャー B. スミス氏は次のように述べた。「労務費が1時間あたり1ドル上がっている現在、1000台以上のロボットのほうが経済的である(4)」と。私たちがたずねたマネジャーの95%の人は、ロボット利用の主な理由として労務費削減を願っていると述べた。