あるビジネス発想を新たにベンチャービジネスに転換しようとする起業家というものは、とかく頭に血がのぼってしまい、周囲にそれがどのように受け取られているかを忘れがちである。これはという融資家は貸付金が戻ってくるかどうかが気がかりであり、サプライヤーにしても、ひな鳥同様のビジネスが求める商品、サービスを提供しても支払いが心配である。

 また、見込客にとってはベンチャーが約束通りの物を出してくるかがまったく不安、といったところである。顧客にしても、ベンチャーが調達したばかりの商品ストックや機器を時代遅れなものにしてしまうような商品を出してくるとなれば脅威を感じかねない。

 往々にして、こうした(事業家にとって重要な)関係者は新ベンチャーに一番乗りはしたがらず、互いに他が先に足を踏み入れるのを確かめたがる。経営者たるもの、反発、気乗り薄を予見し、政治的手腕でこれを緩和もしくは解消させるくらいの下準備はしておかなければならない。

 本稿では、この種の気乗り薄ムードを解消させるのに役立つ各種手段――事業提携、反発集団回避、ネットワークの確立、敵対者との協調など――を概略紹介する。視点は新しい企業に置いているものの、その成果は既存企業内の新事業スタートに関係している本社マネジャーにも参考になるはずである。

 事業家がベンチャー(ベンチャービジネスを指す。以下同)設立を考えるとき、とかく技術、マーケティング、財務的実現性に努力を傾注してしまうものである。もちろん、これらの要素はベンチャー成功に欠かせぬものだが、それだけで十分というわけではない。

 事業家にとって無視できぬ成功要因ではあるが、ややもすると念頭から外れがちなものにベンチャーの政治的運営がある。

 事業家たるもの、あらゆる関係者の動員にあたっては、それぞれ賭金をつけ、本気になって協力してくれるような形を作る必要がある。ここで言う関係者とは外部関係者――銀行家、投資家、サプライヤー、顧客――のことで、共同経営者、従業員など内部関係者は別である。

 必要とあれば政治的手腕を発揮してスタート時の反発を解消しておかないと、最高の事業アイデアも単なる夢に終わってしまう。

 技術レベルが低く、事業規模もほどほど、ライバルにコピーされるのを防ぐ手立てもあまりないといったベンチャーの場合には、とりわけ政治的手腕が必要となってくる。

 とにかく、ハイテク・ベンチャーが備え、ベンチャーキャピタルが魅力を感じるような、うっとりさせる特質――特許保護が容易で、成長性が絶大で、資本利益見込みも大型――が、いっさいないのであれば当然である。