ポートフォリオ分析のアプローチは、ポールに支払うためにピーターから借用するというのと同じように、とりわけ目新しいものではない。貴社の事業部の1つが、見込んでいたほど迅速に成長していない時には、健全で安定した事業単位からあがる現金をその事業部の成長のための資金に当てるだろう。この経営戦略はうまく機能することが多いが、うまく機能しないことも多い。

 本稿の著者の主張によれば、この経営戦略がうまく機能しないかもしれない理由は、ポートフォリオ分析から得られた経営戦略を適用する際に、経営者が事業単位(the business unit)のパフォーマンス中の主要な変数、すなわち本部と事業単位の間に存在する関係を見落とすかもしれないからである。12の組織の本部とそれぞれの事業部(事業単位の総計は69である)との関係を研究する際に、著者は事業単位の自律性の程度、ラインの責任の構築の方法、事業単位の奨励報酬プログラムの設計方法に関する経営者の取りきめが、事業単位のパフォーマンスに対して市場占有率やキャッシュフローの考慮事項と同程度の効果がある、ということを見いだした。

 著者の勧告によれば、経営者は、ポートフォリオ分析の実施と構築・維持・収穫戦略に関する意思決定に多くの時間を費やすが、あるべき適切な関係――その関係は事業部の競争戦略への依存度をどう変えるのか、その事業単位は安定した環境とダイナミックな環境のいずれにあるのか――の規定にも多くの時間を費やすべきである。

 数年前、ある会社が倒産寸前になったことがある。経営者は実行可能な最良の忠告に従い、2~3の事業部に対して急激な売上高成長目標を設定した。売上高成長と企業家的な行動を促進するために、本部の経営者はこれらの事業部が業務活動を行なううえで大幅な自由度を認め、また事業部の経営幹部には売上高成長に対応して報酬を支給することにした。その間に、同社は姉妹事業単位の売上高成長を促進するために、いまなお現金を創出している事業部を活用した。同社は、これらの資金源事業部を厳しく管理し、事業部の経営者に対する小額のボーナス・インセンティブ(奨励報酬)をも厳格な費用削減目標に結びつけたのである。

 最初の数年間、このアプローチは立派に機能しているように思われた。成長事業部が新製品を迅速に発売している間に、売上高と収益は劇的に増大した。その後、問題が持ち上がり始めたのである。

 第1に、資金源事業部の主要な従業員がかなり頻繁に退職し始めた。退職を決意した主要な従業員にインタビューした時、その事業部の経営幹部たちは本部の経営者が資金源事業部に対して行なった公約には信頼がもてない、と漏らしたのである。

 第2に、成長事業部が管理の喪失という不穏な徴候を示した。すなわち、高い在庫水準、高額の保証費、新製品に対して頻繁に起こる苦情が売上高と、とりわけ収益を下落させ始めた。この問題が複合された結果、成長事業部の主要な経営者のうち、その多くは優秀な業績に対して十分に報酬を与えられていたが、本部が彼らの業務活動について根掘り葉掘り質問し始めると、退職者が続出したのである。

 結局、同社の利益は赤字に転落したが、情況を修正する試みのなかで、取締役会は新しい経営を導入したのである。

 これは極端なケースでもなければ、異常なケースでもない。このケースでは、本部の経営者が現業事業部と相互に作用しあう方法が、その事業部のパフォーマンスに対して大きなインパクトを与えるという点が示されている。多くの最高経営者は、このことに気づいているにもかかわらず、事業部に対してどのような姿勢をとるべきかについては、いまなお理解しえないのである。しかも、彼らは不適当な関係をいく度も構築してきた。

 これらの誤った活動の背後には、次の2つの主要な原因がある。第1の原因は、多くの経営者が、市場占有率とキャッシュフローに注意を集中する全社的なポートフォリオ戦略に引きつけられてきたからである(1)。多くの場合、最高経営者は事業部の競争戦略を十分に考慮しなかったり、市場占有率とキャッシュフローの目的が本部と事業単位との関係の構築に有意義な基盤を提供するかどうかを確かめないで、この方向づけを受け入れてきたのである。