アメリカが世界市場で競争力を失いつつあるとすれば、責任の一端は、ビジネススクールの卒業生にあるのかもしれない。短期的分析を重視するように訓練されたこれらの人びとは、企業経営を考える場合に、理論的・財務的見方を重視しすぎる傾向がある。このような方針は、創造性と企業家精神を喪失させるおそれがある。

 その対策として、スクールがなすべきことは、リスクを歓迎し、企業について視野の広い、人道主義的な見方のできる新しいタイプの経営者を養成することである。ビジネスマンは次のような方法で、スクールの方向転換に一役買うことができよう。1)評議員、諮問委員などの資格で、教育方針について影響力を行使する。2)多面的な資質を持ち、型にはまった会社人間でない人材を、卒業生のなかから採用する。

 アメリカ産業の国際競争力低下と、経営者の役割とは、どんな関係があるのか、この問題を分析するうちに、あるテーマが浮かび上がった。それは、"ビジネススクールが、この問題とかかわりがある"ということだった。最も近い関係者は、ビジネススクールの学部長や教授陣であるが、会社役員も、ビジネススクールの質について、利害関係を持っている。

 したがって、本稿は学部長ばかりでなく、企業の経営者をも対象として書かれたものである。周知のように、企業の経営者はビジネススクールの顧客であり、しばしば評議員、顧問、あるいは"出向中の企業経営者"として、スクールの経営にも参加している。本稿がつぎの2つの点で、経営者の参考となればさいわいである。1)スクールが当面している問題についての理解を深める。2)スクールの教育戦略の方向転換について、企業はどのような役割を果たしたらよいかを認識する。

 業界紙、ジャーナリスト、評論家をはじめ、会社役員や当事者(学部長)に至るまで、ビジネススクールについて、批判的な発言をしており、その多くは的を射ている。だがそれは、スクールの教科課目や指導方針を、今日の経営者のニーズに適応させるために、問題点を究明し、それにどう対処すべきかという点には、なんら触れていない。要するにスクールは、MBAやPhDに対して、長期的見方を十分に教えていないと告発しているにすぎない。

 さらに、批判者はつぎのように指摘する。

 1)スクールは量的分析、とくに財務管理、目標などを重視しすぎて、企業の目標設定や価値判断の認識といった質的要因をないがしろにする傾向がある。そのため、問題の確認、目標の設定、具体化といったことよりむしろ、資料収集、情報・人事操作などに重点をおく結果になる。

 2)全般的に見ると、スクールは企業家的活動よりむしろ、官僚的経営に重点を置いている。すなわち、中小企業、新興会社の経営スタイル・問題分析よりも、大企業の経営分析・モデル作成などを優先している。

 3)きめ細かで質を重視する思考、複雑な二律背反関係、創造性などを犠牲にして、"手段(tools)"、構想、モデルなどのプレゼンテーションに、多くのウエイトをおいている。

 4)スクールは人間関係、個人の人格、"生活全般"の開発に目を向けることを怠り、職歴・企業目標などを学生にたたき込むことに、あまりにも多くの時間を投入している。