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アメリカ産業界はどこが悪かったのかという分析は、何度繰り返しても、アメリカ製品の品質の低さと、そのような品質を生み出した経営哲学という問題に戻るのが常だった。これまでは入手できる証拠のほとんどが、概して印象主義的だったし、製造業務に対する、長い間に築かれた周知のアプローチに疑問をさしはさもうとする管理者は、わずかしかいなかった。われわれはもはや、そういう弁解はできない。
著者は、1つの業界で広く製造業を代表できるものとしてルーム・エアコン業界を選び、アメリカと日本における競合企業全部とその工場を、数年間にわたって研究した。著者の発見した事実のなかには、苦いが目をそらすことのできない真実が含まれている。製品の品質水準の格差は、競合する会社の間で限りなく大きい。しかし、その真実のなかには、同時にわれわれを鼓舞してくれる要素がある。というのは、すぐれた品質水準を生み出すのは、国民性や文化的な長所ではなく、慎重にかつ体系的に実行された健全な経営だったからである。
それだけでも、ここで報告するデータは、製品の品質に対する取組み方を再検討しようという気持を、アメリカの経営者に起こさせるに違いない。
製品の品質について考えるとき、アメリカの管理者は今でも、実際より競争の問題を軽視しがちである。一企業内で品質ということばを正確に定義することは、いたって難しい(例えば、品質とは業績を達成する手段なのか、それとも信頼性あるいは耐久性のことか、といった具合に)ため、管理者はとかく自社製品の品質を、競合会社製品の品質と比べたときの優劣などは、知りようがないと主張する。第一、競合会社のほうは、まったく別な品質の"ミックス(組合わせ方)"をしているかもしれないのだ。しかも、あらゆる比較はとどのつまり、林檎と蜜柑の比較にすぎない以上、どれほど頭の痛くなるような成果の開きがあるとしても、筋道のたった戦略の違いというだけのことかもしれない。とすれば、心配しなければならないような、競争的な問題というのは、果たしてあるのだろうか。
わたしは長年、アメリカと日本の両方で、ルーム・エアコン製造業者の生産状況について研究を進めてきたが、最近、1社を除くすべてについて研究を完成した(研究の詳細は、調査方法のところに記載した)。どのメーカーも単純な流れ作業工程を採用しており、ほとんど同じような生産設備を使って、基本的には標準化された製品を作っている。したがってこの場合は、林檎と蜜柑を比べるどころではない。比較の土台はしっかりしているのだ。そして、わたしの用いたデータは、一業界から得たものにすぎないとはいえ、製造工程と製品の品質に対する管理者の取組み方のひろがりから考えると、この研究の成果は広く適用できそうである。
調査方法
本稿は、主に1981年と1982年にアメリカと日本のルーム・エアコン製造業者から収集したデータに基づいて書かれた。この業界を研究対象としたのには、多くの理由がある。当業界には様々な規模と性格の企業が含まれるので、品質政策と実績もいろいろなものが得られるし、製品が標準化されているので、企業間の比較が容易になる。また、単純な組立てライン工程が採用されていて、その他多くの量産産業の代表とみなすことができる、などである。
研究対象となったのは、アメリカ企業10社中の9社と、日本企業7社の全部である。規模のレンジとしては、小は売上高合計が5000万ドル以下のエアコン専門メーカーから、大はエアコン製品ラインだけで年間売上げが2億ドルを超える大家電メーカーまで含まれている。全部を合計すると、対象企業だけでアメリカの業界出荷額のおよそ90%を、日本の場合は100%を占めていた。わたしは、各工場についてのデータをそれぞれ別個に収集した(アメリカ企業の2社は、2つの工場を別々に操業していたが、それ以外は工場は1つだけだった)。研究した18工場のうちわけは、アメリカが11、日本が7である。
アメリカ企業について調査の同意が得られると、直ちにその生産ライン、生産実態、納入業者管理の実情、品質政策、品質実績に関する背景情報が得られるような質問紙を送付した。ついでわたしは、全部の工場を訪問して調査結果をチェックし、付加的なデータを収集しながら、工場を視察し、主な人びとに面接を実施した。面接は質問紙を用いない自由回答形式によるものだったが、どの会社でも同じような質問をした。典型的な訪問のスタイルとしては、品質・製造・資材調達・技術・サービス各部門の管理者と面接するとともに、工場内を数時間歩きまわることになった。
面接ならびに質問紙の結果を予備的に分析してみて明らかになったのは、各社とも同じようなデータ報告の方式をとっていないし、質問に対する回答の詳しさもまちまちだということだった。わたしはそこで各社に補足質問票一式を送りつけて、そのギャップを埋め、会社間で比較できるようなデータにすることにした。さらにわたしは、各社に対して、第一線の生産監督者が品質に対して、どういう態度を示すかについての簡単な調査を実施してくれるように依頼した。
わたしは同じようなアプローチを日本のメーカーに対しても行なったが、時間的な制約があったため、収集可能な情報量に限りがあった。全質問はまず日本語に翻訳したうえ、協力してくれる会社に郵送した。7社のうち6社は、アメリカ企業と同じように、品質に関する基本的な質問票に回答してくれ、また、少数の第一線監督者に対して、品質に関する態度調査を実施してくれた。通訳の助けを得て、わたしは全社を視察訪問面接し、6社の工場を見学した。
わたしにとってまったく意想外で衝撃的だったのは、いちばん品質のすぐれた生産者の不良品発生率が、もっとも品質の悪い生産者の500倍から1000倍も低いという事実だった。"500から1000"というのは、決して書き間違いではない。厳然たる事実なのだ。ここには考慮に値する、真に競争的な問題が存在する。
品質を測定する
表1は、日米のルーム・エアコン製造業者が達成した品質の成果を、1つにまとめたものである。わたしは、品質を2つの方法で比較した。"内部"および"外部"での不良品発生率である。内部不良率には、製品が工場から出荷されるまで(製造中あるいは組立ての間)に発見されたすべての欠陥が含まれ、また外部不良率には、製品が据え付けられたのちに市場で発生したすべての故障が含まれている。後者(外部不良率)の代用として、わたしは製品保証期間の1年目にかかってきた修理要求電話(サービス・コール)の回数を用いたが、これは1年目が、日米両国のメーカー保証を比較できる唯一の期間だったからである。
日本企業は、どちらの尺度で比較してみても、アメリカの競合会社より、はるかにまさっていた。日本のメーカーの組立てラインにおける平均欠陥率は、ほとんど70倍も、また1年目における修理要求電話の平均回数はおよそ17倍も少なかったのである。この格差は、外観についてのとるに足りないような欠陥のせいばかりにはできない。不良個所の発生率を、主な機能上の問題(漏電等の電気的な)あるいはコンポーネント、つまり構成部分(コンプレッサー、サーモスタット、ファン・モーター)の不良発生率で分類してみても、結果は同じなのである。
内部・外部の両尺度に照らしてみて、さらに驚くべき象徴的な事実は、いちばん成績の悪い日本企業においてさえ、もっとも優秀な米メーカーの半分以下の不良しか発生していなかったことである。アメリカの企業の間でも、組立てラインにおける欠陥率の格差は著しくて、100単位につき7から165と、最高と最低では20倍の開きが、修理要求電話の回数でも5倍の開きが見られた。




