マーケティング・サイエンス・インスティテュートが行なっている研究のなかで最も重要なものの1つに、市場戦略が利益に及ぼす影響(PIMS――profit impact of market strategies)がある。

 PIMSの基本眼目は、企業のトップマネジメント、部門マネジメント、マーケティング・マネジメントおよび経営計画者に対して、種々の事業が様々な競合環境下においてあげるべき期待収益性に関し、その見きわめ方と情報を提供することにある。

 本稿では37項目の要因が考査・分析されているが、それらの要因のなかには市場占有率・マーケティング諸費用・製品の品質・研究開発(R&D)費用・投資集約度(investment intensity─売上げに対する投資の比率)等が含まれる。600件を超す事業の分析の結果では、前述した要因が事業利益の差異を生ぜしめる要因の80%以上を占めている。本稿は、著者がその調査結果の要点を記述したものである。

 いま、所与の市場および業界の状況のもとで、ある事業があげるべきROI(return on investment、投資収益率)は、どの程度が"標準"といえるだろうか。いかなる要因をもってすれば、種々の事業における典型的なROI水準の差異を説明できようか。ある事業で用いられる戦略の変化が、その事業のROIに対し、いかなる影響を与えるだろうか。また競合活動の変化はいかなる影響を与えるだろうか。

 企業経営者や計画責任者は、企業の戦略計画の中枢にあり、彼らの多くはこういった問いに対する、より信頼のおける答えを求めている。そこで、まずこのような問いが生じるいくつかの様態を考えてみよう。

利益予測:多角化している企業では、事業計画はおのおの製品部門または営業部門で作られるのが常である。その後にこれらの計画は企業の経営陣によって、しばしば専門スタッフの助力を得て検討される。各部門計画のなかでも将来における所要投資と利益見込みは、当然、主要項目の1つである。これらの予測は、往々にしてある一部の実績を将来に投射した計画にすぎないが、市場環境の変化が予想されるとき、あるいはまた戦略の変更を考えるべきときに当たって、過去の姿が将来を占うのに、はたして何ほどの役に立つであろうか。

資源配分:各部門計画を全社レベルで検討する大きな目的は、資本・人員およびその他の希少な経営資源を各部門にいかに効果的に配分するかにある。往々にして各部門の投資要求を積み上げると、全社として不可能な数字に達するものである。そこで問題はどこに重点をおくかということになる。どの製品が、またどの市場が最も有利であろうか。各部門はおのおの自部門の計画をもり立てようとするから、このような場合は特に、各部門長の出してくる利益見積もりはあまり信用できない。

経営実績評価:利益見積もりの問題と密接な関係にあるのが、利益実績評価の必要性である。A部門が税引前で30%のROIをあげているのに対し、B部門は15%に過ぎないという事態があったとしよう。その場合、AのマネジメントはBより2倍も効果的であるから、それにしたがって報われるべきであろうか。B部門の経営者はこれに当然反対するだろう。彼らは、このROIの差異は、諸条件、例えば市場成長率および競合の強弱の差異に起因するというかもしれない。そして、彼らのいうことはたぶん正しいかもしれない。このような場合に、企業経営者としては、異なる単位部門が、所定の状況下でいかなるROIをあげるのが妥当か、あるいは"標準"かを決定する何らかの方法を必要としよう。

新規事業提案評価:さらに、戦略計画に共通するもう1つの問題として、社内的にあるいは買収によって行なおうとしている新規事業のROIの見積もりがあげられる。当該事業が企業にとって新しい分野のものであれば、従来の経験は援用できない。買収によって参入をはかる場合でも、既存事業における実績がはたして将来への道標となりうるかは疑わしい。

 以上、4通りの戦略計画の策定状況に共通していえることは、所与の業界と市場状況下および所与の戦略のもとで、ある事業があげうるROIを見積もる何らかの手段が必要だということである。熟達した事業経営者あるいは経営計画者ならだれでも、個々の部門あるいは製品ラインにおけるROIは、事業によりまた年度によって大幅に変わることを知っている。いかにすれば、この変化を説明でき、また予見できるだろうか。