昨年かその前の年あたりから、自社のある製品の需要が下がり始め、しかも競争相手の製品でも同じような傾向が出ている。その製品が技術的に徐々に陳腐化しているために需要が下がっているらしい。完全に陳腐化してしまうのも時間の問題のように思われる。この業界にとどまり投資を続けて、はたして利益をあげられるのだろうか。エンドゲーム戦略としてどんな手をとればよいのだろうか。

 著者たちは、需要の衰退に直面した95社以上の企業の戦略を調査してきた。そしてエンドゲームでもときには大きな利益があげられること、エンドゲームで成功した企業は、その業界の性格に関していくつかの重要な問題点についての答を出していること、を明らかにした。

 それらの重要な問題点とは、それぞれの競争業者がかかえている撤退障壁とはどんな内容のものか、業界の衰退パターンが競争にどんな影響をおよぼすのか、それぞれの競争業者の能力は業界に残ったポケット需要に適合しているか、である。

 著者たちは、衰退業界にとどまったときの収益性をきめる要因と衰退業界にふさわしい戦略案を明らかにしたうえで、エンドゲーム戦略を選ぶためのガイドラインを示している。

 エンドゲーム(名詞)1:ブリッジゲームの最終段階。2:チェスなどのボードゲームでの最終段階。特に大駒の交換も終わり、少数の駒で詰めを競うチェスでの終盤戦のこと(1)。

 科学者がトランジスタ効果を発見したのは1948年であるが、すでにその当時からテレビ用真空管が技術的に陳腐化してしまうことは明らかであった。トランジスタ効果が発見されてから2、3年もしないうちに、トランジスタ・メーカーは、1961年までにテレビ受像機の半数は真空管の代わりにトランジスタを使うようになるだろうと予測していた。

 1950年代以降、真空管メーカーは現在にいたるまで一貫して、この業界でエンドゲームに従事しているのである。他の業界でのエンドゲームと同じように、真空管業界でのエンドゲームも需要が減り続けるという環境のもとで戦われている。したがって、業界の最盛期の生産能力が再び必要になったり、当時のメーカーが復活する可能性はもうほとんどないといっていいだろう。現在では経済成長はほとんど望めないし、技術革新も急速に進んでいるから、エンドゲームをうまく切り抜ける必要性に迫られている企業の数が、ますます増えている。

 エンドゲームはイス取りゲームのような性格を持つものであるから、その戦いは凄惨なものになりやすい。アメリカでのガソリン戦争がよい例である。1973年から83年までの10年間は、原油価格の高騰と消費者側での節約努力のせいで石油精製業界からの出荷量は激減してしまった。原油の供給量とガソリンの需要量がはっきりしないため、ガソリン出荷量の減少傾向がどのくらいの割合でいつまで続くのか、という予測が立てにくくなり、業界の統一見解もたてられないままであった。さらにこのエンドゲームを戦っている企業それぞれの見通しもまちまちなうえに、気まぐれな動きの需要減少に対処するための戦略も各社ごとに違っていた。

 ベビーフーズ業界では需要の頭打ちになるまで10年間にわたって価格戦争が荒れ狂いエンドゲームが演じられているが、それと同じようにガソリン業界でも小さくなっていくパイをめぐってシェア争いが展開している。

 生産設備はぎりぎりまで合理化されており、各メーカーとも今後も続くと思われる厳しいエンドゲームに備えて守りの体制に入っているので、長期にわたる低収益は避けられない状況である。