これまで品質を高めるための検討といえば、作業意欲と生産工程についての問題と相場が決まっていた。しかし、どれほどデザインのよい、欠陥のない製品であっても、品質がよいと消費者が認めてくれなかったり、しかるべきアフターサービスが実施されなかったりすると、売れなくなる可能性がある。著者たちは、こういう主張のもとに、品質についての消費者の考え方の変化に注目するとともに、製品のアフターサービスを行なうよう企業に勧告している。

 企業が大衆の品質に対する認識の変化を追跡するためには、現在の顧客および潜在顧客を調査し、大衆の嗜好を示す指標を注意深く観察することが必要だ。また、サービスに対するニーズは、製品のライフ・サイクルに従って絶えず変化するので、企業はどんなニーズがもっとも重要なのかを把握するため、顧客と常に接触していなければならない。

 顧客サービス計画を立てるまえに、まず管理者は顧客サービス監査を行なう必要がある。これは、自社のサービス内容を評価すること、それを競合会社のサービスと比較することから成り立っている。それを知って、初めて企業は自社のサービスが十分であると安心できるのだ。

 近年、企業の経営幹部と消費者の間で、製品の品質に関して見解の相違が目立ってきた。最近の調査をいくつか見ると、品質について両者の認識のずれが、どれほど大きいかが分かる。

□ 1981年に行なわれた調査によれば、わが国の大企業1300社の経営幹部5人のうち3人までが、品質はどんどんよくなっていると答え、低下しているというものは、わずか13%に過ぎなかった(1)。ところが、1981年の別の調査によると、消費者7000人中の49%までが、アメリカの製品は過去5年間に品質が低下したと答えている。そのうえ59%は今後5年間に品質がこのまま横ばいか、あるいはもっと低下するだろうと予想している(2)。

□ 1981年のある調査によれば、主なアメリカの家庭用電気器具メーカーの経営幹部の半数は、近年自社製品の信頼度は向上したと答えている。一方、アメリカの消費者で同じ意見を表明したものは、たった21%だった(3)。

□ アメリカの自動車メーカーの経営幹部が引合いに出す社内記録には、品質が毎年向上していることが示されている。「フォードの品質は、1981年のモデルと比較すると27%向上した」と、あるフォード社の経営幹部はいう(4)。だが、調査の示すところによれば、消費者が認識しているアメリカ車の品質は、輸入車と比べて低下する一方であり、ことに日本車と比較するとそれが著しいとされているのだ。

 このようなギャップを懸念したアメリカ企業の多くは、自社の品質イメージを高めるために、販売促進的な戦術に頼ることにした。その手の試みは、つぎのような2つの傾向に如実に表われている。1つは、広告に際して、品質ということばや、信頼性、耐久性、出来ばえといったテーマをしきりに強調するようになったことである。例えば、フォード社は「品質はジョブ・ワン」という広告を打ち、リーバイ・ストラウス社は「品質はスタイルから離れない」という考え方を打ち出した。そしていまや、多くの広告が、自社の製品は"ベスト"だとか、競合会社の製品より"すぐれている"と主張しているのである。

 第2の傾向は、品質を保証し、サービス計画を拡充しようとする動きである。クライスラー社では5年間、5万マイルの保証を申し出ているし、ワールプール・コーポレーションは15年間、すべての機種について部品を用意することを約束している。ヒューレッド・パッカード社は同社のコンピュータについて、99%の稼動有効時間を保証し、メルセデス・ベンツは、正規のディーラー・サービス時間帯が過ぎても、技術者に路傍で補修サービスが受けられるように便宜をはかっている。

 顧客の認識を改めさせようとする、このような試みは、正しい方向へ一歩を踏み出したものには違いないが、1つの企業あるいは製品の品質イメージというものは、どうみても一朝一夕に改善できるものではない。消費者に信頼感を植えつけるのは、時間のかかることであって、販売促進的な戦術だけでそれをやろうとしても、むりだろう。実際に、主張したり約束したりしていることがきちんと守られず、顧客があれはまやかしだと感じた場合は、まったく逆効果にもなりかねない。