企業競争に成功をおさめていくことが、製品およびプロセス技術の双方に精通することに、これまで以上に深く結びつきつつある現在、米国の企業経営者は、もはや彼らの技術革新に対する努力を単に新製品あるいは既存製品の改良に向けているだけでは、すまされなくなってきている。彼らは、プロセス技術の進歩に対する後援や支持に関して、直接かつ継続的な責任も負わなければならないのである。

 ここで問題となる点は、当然のことながら新設工場を軌道に乗せるまでには、長い期間が必要とされるということである。建設計画および設備予算計画の段階だけでも数年間もかかることがある。もしも企業経営者が、そのような計画によって生じる拘束を回避しようとするならば、彼らは早い段階で新しい生産設備が自社の技術革新能力にいかなる影響を与えるかを明らかにしなければならない。すなわち、彼らは現在の計画策定業務のなかに将来技術に関する徹底的な評価作業を取り込む必要があるのである。

 本稿の著者は、企業経営者がそうした技術評価の仕事を始めることができるような、いくつかの分析手法について論述している。

 技術革新が隆盛を極めることのできる環境を創造するということは、企業経営者にとって別段、新しい挑戦課題ではないが、そうした環境の創造は、ここ数年のうちに以前にもまして難しく、かつ重要な課題となりつつある。今日、筆者が長年過ごしてきた化学産業のような技術依存型産業においては、プロセス技術に関する競争上価値の高い進歩は、その導入に際していくつかの障壁に、どうしても遭遇することになる。

 過去に比べ経済成長率が低下してきたことは、設備増強の機会がより少なくなってきていることを意味している。設備投資額の巨大化と高金利は失敗に対する許容範囲を狭めつつある。そして、将来における原料調達に関する不確実性ばかりでなく昂進するインフレは、"隘路解消策"――すなわち、将来需要に対応する1つの方策としての既存生産設備の利用にかかわる障害を除去していくこと――の価値を高めつつあるのである。

 継続的な経済成長が約束されていた時代には、企業のトップ経営者は自社の設備計画を通じて技術革新を刺激し、支援していくという重要な任務をしばしば真剣には受けとめていなかった。しかしながら、もはやそのようなビナイン・ネグレクト(善意ある無視)を決め込んでいるわけにはいかなくなっている。ここでの問題は、当然のことながらプロセス技術に関する意義ある進歩を実現するためには、一般に5年から10年間のリードタイム――大半の企業経営者が想定する設備投資のための3年から5年という計画期間よりも長い期間――が必要とされるという点である。

 さらに、あるプロジェクトに関する基本的技術の選択は取締役会が資本投資を決定する約18ヵ月前にすませておかなければならないので、企業経営者は必然的に後になって、そのような選択が行なわれた前提に関する疑問や代替案の提案といった形の抵抗にあうことになる。取締役会の承認日の前12ヵ月間という期間でさえも、新設工場の建設計画に深刻な影響を与えずに軌道修正を行なうには、あまりにも僅かな時間的余裕しか確保できない。そして、一方、次期工場のあとにくる工場――次世代工場――はといえば、時間的にあまりにも先のことのように思われるので、指針的な設備投資計画のなかに含まれることは、まずありえない。

 しかしながら、かりに研究、開発、および設計の各機能が企業の長期目標に然るべき影響力を持つべきであるとするならば、また主要なプロセス技術の進歩が実現されるべきであるとするならば、次世代工場といえども、まったく遠い先の話ということにはならないのである。

未来は今日に端を発する

 次世代の工場を稼動させるために遂行されなければならない、長期にわたる作業の計画を立てる最良の時期は、現在、稼動している工場の計画段階である。その計画段階というのは、実行可能なことと時間的余裕がある場合に実行することが望ましいこととの間に妥協が生じる時期なのである。その時期はまた、技術的な稚拙さ――必要とされる技術革新へのガイドポスト――が最も鮮明になる時期なのである。かりに企業経営者が短期計画と長期計画との間の利害衝突を、おそらく不本意ながら、例えば経費の削減といった当座の必要のために長期計画を犠牲にすることによって解決しようとするならば、意義ある技術革新の芽を摘みとることになるのである。

 このように、次世代工場について計画を立てることは、研究、開発、および設計を目標にそって進めるための有効な手段であるばかりではなく、それはまた、プロセスに関する技術革新を全社の事業戦略にとって不可分な要素とするために、自社がプロセス技術の革新について十分洞察力を働かせているか否かを企業のトップ経営者が判断する際の有力な手がかりとなるのである。