長たらしい報告書、頭の痛くなる数式の羅列、そして目玉のとびでるような代金。中小企業の経営者や非営利法人の役員は、市場調査という言葉を聞くと、反射的にこういうことを連想する。市場調査に理解を示し、大金を投ずるのは大企業だけだと、大方の人びとは考えている。市場調査に対する、こういったイメージは、5つの誤解がもとになってでき上がったものである。

 高価で膨大な市場調査の代わりに、テスト・マーケティング、グループ・インタビュー、観察法、前例研究法等を有効に活用すると、少ない費用で市場調査の目的を十分に達成することができる。調査の技法よりも、求める情報と到達する意思決定との関連性のほうがもっと大事である。調査の目的さえはっきりしていれば、高度な調査技法を駆使したり、膨大な費用を投じなくても、必要な情報は十分に入手できると、本稿の著者は、述べている。

 中小企業の経営者や非営利法人の役員は、市場調査の本質や効用を正しく理解しないままに、市場調査には、うっかり手を出さないほうがよいと、とかく避けて通りがちである。市場調査に関して、経営者は、どうやら次のような5つの思い違いをしているようだ。

 1. "重大な意思決定だけに用いるもの"という思い違い。重大な意思決定をするときにだけ、市場調査の助けを借りる。日常の小さな意思決定には、市場調査はまったく不用であると思い込む。

 2. "市場調査とは標本調査である"という思い違い。無作為抽出、質問票、コンピュータによる集計票、推計分析などの技術的側面に気をとられすぎて、市場調査イコール標本調査と思い込む。

 3. "市場調査には金がかかりすぎる"という思い違い。市場調査には大変金がかかるので、大企業が大きな意思決定をするときにだけ用いるものと思い込む。

 4. "市場調査は素人には使いこなせない"という思い違い。市場調査には高度で複雑な技術が必要なので、熟練したエキスパートだけの占有物であると思い込む。

 5. "調査報告書は引き出しの奥にしまい込むもの"という思い違い。調査結果の大部分は、経営者の関心の的からはずれている。さもなければ、すでに知っていることの追認にすぎないと思い込む。また、調査設計が的はずれである。レポートがあまりにも読みづらい。また難解すぎるなどの理由で、読まずに引き出しにしまいこまれる。

 本稿のなかで、著者は以上の5つの思い違いを、もう少しくわしく説明し、そうなった背景を分析する。あわせて、安くて効果的な市場調査法を紹介する。

"重大な意思決定だけに用いる"という思い違い

 市場調査は多額の資金投下の是非を意思決定する重大な時期にだけ使うものである。また、重大な意思決定の際には、必ず市場調査を実施しなければならない。こういう思い違いをしている人が非常に多い。これは誤りである。調査をするかしないかは、コストに見合うだけの価値があるかどうかで判断すべきである。