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DX(デジタル・トランスフォーメーション)は、日本企業を強くしたのだろうか。効率化の名の下で、現場の知恵が失われてはいないか。本稿は「DXの遅れ」という通説を問い直し、データの背後にある文脈や判断、関係性など“意味”に着目した「意味を扱うDX」というフェーズを探る。その先に「日本型DX」の新たな輪郭が現れる。日本企業の強みをデジタルで拡張し、未来の価値創造へと昇華させる設計思想を深掘りする。
何のために進めるのか。「DXの遅れ」という誤診
DXを進めているが、組織の意思決定は速くならないし、現場では活発な議論が減った――。そんな違和感を覚えたことはないだろうか。
これに対して、ドリーム・アーツ取締役常務執行役員の前川賢治氏は、「デジタルを使って業務の非効率性や無駄をなくすことは必要ですが、そもそも何のためにDXを進めるのかを問い直さないと、大事なものを失うリスクがあります」と指摘する。この「そもそも論」こそが、ドリーム・アーツが考える次のフェーズ「日本型DX」の出発点である。
メディアやテクノロジー業界では、「日本のDXは遅れている」という見方が繰り返し述べられてきた。だが、日本社会を観察すれば、秒単位の正確さで運行される鉄道、災害の混乱の中でも自然発生する協力と秩序など、他者から強制されるのではない「信頼のインフラ」が深層部分に根づいていることがわかる。
DXの「遅れ」と見えるのは、この信頼のインフラを守ろうとする「健全な防衛反応」――すなわち過度な効率化・標準化によって、長年かけて築かれた現場の知恵や人間関係が損なわれることへの静かな抵抗。ドリーム・アーツでは、そう捉えている。最も注意しなければならないのは、「表層的なDXによって、日本の強みを損なうリスクです」と前川氏は指摘する。
その「強み」とは何か。ドリーム・アーツは、信頼のインフラ、時間の厚みの中で育つ現場知・組織知、文脈と意味を読み取る力、そしてすり合わせ・重ね合わせによる進化能力の4つを挙げる。「暗黙知と形式知、組織知とデジタル技術、そうした異なるレイヤーをすり合わせて新しい価値を生み出す。それが日本らしいDXだといえます」(前川氏)
「日本型DX」への転換。意味を扱うDXへ
これまでのDXは「何が起きているか」を把握するものだった。これからは「それが何を意味するか」を扱う次のフェーズに入る。意味や文脈とともにデータを扱う「意味のDX」だ。こうした日本企業の強みに根差すDXのあり方から、「日本型DX」の輪郭が見えてくる。
日本の強みを損なわずにDXを進めるには、何が必要なのか。