AIエージェントを通じて高度な顧客体験を創出
顧客コンテクストデータの注入によって、AIの振る舞いはどう変化するのか。その実例として、牧野氏は対話型AIエージェントのデモを2つ披露した。
1つ目は、動画配信サービスに組み込まれたAIエージェント。顧客コンテクストデータを取り込んでいないケースでは、何度も質問を繰り返し、的外れな提案を行ってしまう。一方、顧客コンテクストデータを読み込ませたエージェントは、ヒアリングなしに次々に新たな提案を行い、ユーザーの興味・知識を高めながら、好みに合致した作品を紹介する。レコメンドの質の大幅な向上を印象づける内容だった。
2つ目となる金融営業支援エージェントのデモでは、顧客と会話しながらリアルタイムでコンテクストを検出し、それに応じて商品の提案や注意喚起を即座に行う様子を紹介。即時のコンテクスト抽出とその活用という、より難易度の高い機能の実証となった。
売上げや利益といった経営指標と顧客コンテクストデータをひもづけ、それらのデータを分析することで、顧客が自社を選ぶ理由がわかる。そして、自社を選んでくれる「重要顧客」のコンテクストが特定できれば、そのデータを商品開発やマーケティングなどさまざまな企業活動に活用することができる。こうしたデータドリブンな意思決定を実現する技術として、牧野氏はプレイドが独自開発したコンテクストレイヤーのデータ基盤「Context Lake」を紹介した(図表2)。
図表2 プレイドが独自開発したデータ基盤「Context Lake」
その仕組みはこうだ。属性や購買履歴といった従来型のデータ(構造化データ)と、商品レビューや音声・動画といった多様な形式のデータ(非構造化データ)を一括処理してコンテクストを解釈し、タグ付きのデータに自動変換。さらに、顧客と商品の関係を多面的に分析して、立体的な顧客理解を実現する。Context Lakeは、同社が提供するCX(顧客体験)プラットフォーム「KARTE」で解析した顧客の行動データを活用し、Context Lakeの中で機能するAIエージェントを通して「高度な顧客体験を創出していく」と牧野氏は説明した。
「Context Lakeによって得られた顧客コンテクストデータを俯瞰的に分析することで、経営層による戦略的意思決定の精度と速度の向上、顧客インサイトを起点とした商品開発、マーケティング施策の最適化と効果測定の高度化、データ分析業務の効率化・高度化などが可能になります」
講演の最後、牧野氏はAI活用による競争優位創出のポイントが「いかに自社固有の顧客コンテクストデータをAIに読み込ませるか」にあることをあらためて強調。顧客が「いつ、なぜ、どのような悩みで」自社を選んだのかという深い文脈をAIに学習させることのできる企業だけが「他社に真似のできない独自の価値創造と、高精度の事業予測を実現できるのです」と結んだ。