「データシェア」が切り拓くAI活用の可能性
協賛講演の終了後に行われたクロストークセッションでは、基調講演を行った松尾研究所副社長の金剛洙氏とともに牧野氏が再登壇。
セッションテーマは「データに眠る物語をどうやって紡ぎ出すか」。AIがインターネット上のオープンデータを学習し尽くす「データの壁」が2030年頃に到来するといわれる中、企業にとっての真の壁は「誰でも使えるAIでは何の差別化にもならない」という現実にある。こうした論点を整理して、セッションが開始された。
モデレータから、プロプライエタリデータ(企業独自の非公開データ)から物語を見出す際のAIと人間それぞれの役割について問われた牧野氏は、アパレル企業の事例をもとにこう答えた。
「同じランニングシューズであっても、初心者が1足目として選ぶこともあれば、上級者がこだわりを持って指名買いするケースもあります。商品の背後にあるコンテクストは多様化しており、それをAIで正確に把握できるようになれば、レコメンドの精度が向上するだけでなく、注力すべき商品や顧客群の割り出しという経営判断にも活用できます。さらに、店舗での接客教育やB2Bの営業アプローチなど、さまざまな領域で『次の一手』を最適化できるようになるのです」
また、企業が自社データの何をオープンにし、何を守るべきかという問いに対して、牧野氏は「オープンとクローズの2層ではなく、連携したグループ内でのシェアという形もあります」と指摘。各社がデータを持ち寄ることで、単独では不可能なリッチなコンテクストを抽出・共有できれば、それぞれがエンドユーザーのニーズにより適したサービスを提供できるようになるとの見方を示した。
AIが汎用化しつつある現在、真の差別化を実現できるかどうかは、企業が自社データからどれだけ豊かな顧客コンテクストを抽出できるかにかかっている。本格的なAI時代を迎えるに当たり、企業はどのようにAIを活用すべきか、その重要な視座を得られたセミナーとなった。
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