どこまで「AI店長」に任せるか分界点を明らかにする

「AIエージェントによるリスクマネジメントの有効性を現実世界で実証するために、AI経営が可能な小規模事業を構築しました。実験を通じて知見を集め、今後は複雑なビジネスモデルにも対応するAutonomous Industrial Twin構築を目指します」とPwC Japanグループ AI Factoryの中島義耀氏は言う。

 実証実験は2026年5月から始まっているが、それに先立ち複数のLLM(大規模言語モデル)を用いたシミュレーションを実施した。中島氏は、LLMごとに性格の違いがあると話す。

「ダブルチェックを繰り返す慎重なLLMもあれば、リスクを取って収益増を狙うアグレッシブなLLMもあります。リスクの取り方への自認や指示への追従度合いにも違いがあり、複数のLLMの組み合わせ方には工夫が必要です。シミュレーションを重ねる中で、AIにどこまで任せられるかという『限界の輪郭』が見えてきました」

 実店舗での実証実験では2タイプの商品棚を用意。AI Factoryの隅本晋太朗氏が説明する。

「AIによる自律運営、人間による運営という2タイプの棚を比較観察します。いずれも、品出しなど物理的な業務は人が担いますが、前者ではそれ以外に人は介在しません。AI店長は、人間の店長と同様にリアルタイムの需給変動に基づき、発注判断や価格変更、棚配置の判断などを自律的に実行。顧客へのキャンペーン通知、収支レポート作成など幅広い業務を担います」

 いずれの店長にも、品切れのない円滑な棚運営が期待される。売上げや粗利、営業利益などの財務指標も比較検討され、今後の研究開発に活かされる。

「社員に送付する販促メールに、景品表示法違反の表現がないかといった法規制遵守の観点も、実証実験で確認したいポイントの一つです」と中島氏。顧客の予測困難な行動を含め、実店舗ならではの環境でAI店長がどのように対処するか。それを実データで検証して、「AIにどこまで任せられるか」という分界点を明らかにする。それが、実証実験の大きな目的だ。