日本の挑戦、それによって引き起こされた競争の結果、米国企業のマネジャーは、オートメーション技術の著しい進歩の面についてはもちろん、生産方式の習熟の面にも多大の関心を向けるようになった。工場に最新式の機械を1台追加するだけでは十分な対応とはなりえないことを、マネジャーたちはすでに認識している。

 生産活動によってもたらされうる市場価値を完全に実現しようとするならば、きらびやかな新型ハードウェアのほかに、それ以上の何かが必要である。

 著者が熱心に説いているのは、この"それ以上の何か"である。それは、工場の無在庫生産(Stockless production)――バッファとしての仕掛品在庫を全く必要としない生産――の理念への確たる志向である。著者も説明しているように、この生産方法は作業の流れ、ジョブ構造、生産計画を再編成しなければならないために、その採用、実現は決して容易ではない。しかし、そうした再検討は昔から変わらぬ課題でもある。

 ある工場において、自社製品のどの1つであっても、市場が求めるときに、いつでも生産することが経済的に可能であるとしよう。このような工場は、どのように組織し、管理していけばよいであろうか。フレキシブルな生産技術のほとんどがすでに利用しうる現在では、この質問はレトリック以外の何ものでもない。

 しかし、経営管理についての考え方は、今再び生産能力に大きく遅れをとるにいたっており、そのこと自体――生産技術ではなく――が、発展の大きな障害となっているのである。たしかに、限界コストの低減や各社独自の品質向上のために、CAD/CAM、ロボット工学、資材所要量計画、最適化手法、コンピュータ・データバンク、詳細な原価計算システムが活用されているが、マネジャーは、これらの方法によってフレキシブルな自動化の利益を得るべく、あれこれのプログラムのなかで右往左往し、目にみえた成果をあげられないままに終わっているのである。

 実際には、その成果は手を伸ばせば届くところにある。正しい道を歩めば、その一歩を踏み越えることができるはずである。その正しい道は、リードタイム・ゼロ、在庫ゼロ、すなわち無在庫生産を達成することからはじまる。完全な統合生産プロセスのなかで資材のフローを円滑に保つためには、機械設備のメンテナンスが十分に行なわれていること、わずかの能力超過が確保されていること、加工部品すべてに欠陥がないことが前提となるのは当然である。さらに、このシステムは、スクラップが生産されだしたときには自動的に停止するものでなければならない。すなわち、全生産工程にわたって極めて優れたリアルタイムのコントロールが連動して行なわれるような手順体系となっていなければならない。

 無在庫生産を基盤とするフレキシブル・オートメーションについての以上の考え方は、経営計画をどうするかというよりも、製品はどのようにして作られるべきかという考え方に基づくものである。このような考え方は、最初から経営管理活動の指針とするには実際的ではない。現在では、完全自動化工程における原材料から完成品にいたるまでの逐次連続的な流れは、単純製品についてのみ可能である。しかしながら、生産工程を発展させ、生産工程をこのゴールに近づけることができるならば、それがどのようなものであっても極めて大きな改善である。このように考えていくことによって、経営管理者は、小さな改善ではなく、自らが何をなすべきか――そして何ができるか――についての展望を得ることができる。

どこから始めるべきか

 組立製品の生産において、ジョブ・ショップ形態から繰返し生産(もしくは大量生産)への変更が可能ならば、そこが着手するのに適したところである。ジョブ・ショップ形態においては、類似の機械がグループ化されて一連のワークセンターが形成されるが、各ワークセンター間を移動する加工用材料のロットの大きさは一定ではない。これとは対照的に、繰返し生産では、非定型的なジョブ・オーダーではなく、産出速度計画によって作業の流れが規定され、また機械設備の組織は、ヘンリー・フォードの設計した工場レイアウトに極めて近いものとなる。

 多くの工場では、いずれの生産形態もみられるために、両者の違いが不明確になることが多い。また繰返し生産が可能な場合でも、機械設備の設計、計画、コントロールがジョブ・ショップ形態で行なわれていることが多い。

 図1に示されているようなストリームライン型の(秩序だった一定方向への)資材のフローは、ジョブ・ショップ段階にとどまる活動があっても全体としての生産性を向上させる。在庫がしだいに減少することによって、工場全体のあらゆるレベルでの活動が解決しなければならない問題が、明確になる。在庫が受入れ、送出しの各ストック・ポイントに収容しうる程度に低下したときに、ストリームライン型のフローが開始されるが、それは継続的な在庫減少の引金となり、生産工程そのものの変更を必要とするようになる。このプロセスが円滑に行なわれるようになるにつれて、ワークセンター間に滞留する在庫はゼロになり、自動化に近づく。