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最近、新聞の経済欄の第1ページにのることが多くなってきた記事は、産業界のリーダーたちが政府に対して、日本のアメリカ市場への貪欲とも思われる進出の抑制を求める声である。ある議論は、その焦点をアメリカは門戸開放政策をとっているのに、日本はアメリカ製品の輸入制限をしており、これは不公平だということにあてている。また別の議論は、一方通行的貿易がわが国(アメリカ)経済に与える被害を強調している。それらの議論がいきつくところは、輸入割当制、最低価格制度、あるいはローカル・コンテント法による輸入制限の要求の高まりである。
本稿においては、かつて日米間の貿易紛争を経験したことのある、ある企業の最高経営責任者が、これらの紛争は国際的な貿易制度にある不平等ないし不公正な取引慣行に関する主張と絡み合ってきたと指摘する。彼は輸入に対して人為的な制限を加えると、自由貿易のもたらす様々な恩恵を切り捨て、平等と公正という怨念に満ちた問題が解決されないまま残ってしまうのではないかと懸念する。
彼は輸入自動車に対して市場を閉ざしてしまうと、われわれはそれだけ貧しくなると考え、むしろ自動車輸入に対して最低の税を課して1947年のガット体制の創り出した不平等をなくし、公正で自由な貿易に門戸を開いておくことを提案する。
アメリカの世論調査をみると、ここしばらく前から保護主義的意見が、圧倒的多数を占めるようになった。1978年夏のハリス調査では、アメリカ人は61%対33%で、「自由貿易志向のアメリカの伝統」を維持するよりも、「対米輸入製品の制限強化」に賛成であることがわかった。回答者は64%対26%で、「われわれは、アメリカ製品の輸入を制限しながら自国製品は自由にアメリカに輸出している国のかもになってきた」という見方に賛成であった。1980年なかごろのハリス調査では、国民は70%対26%で、「アメリカにある大量生産型外国車は、アメリカの労働者を雇うアメリカの工場で生産されねばならないとする法律の制定」に賛成であることがわかった。
いま議会が表明しているのは、国際貿易問題について国民の態度に前々からはっきりと表われていた不満と幻滅感である。1982年12月に下院は215対188で、アメリカで販売される自動車の生産に使う部品や労働力は最高90%まで"アメリカ製"とする法案を可決した。この国産比率はメーカーの年間売上げ台数によって変わることになる。例えば日産とトヨタがアメリカにおける現在の売上げ台数を維持するとすれば、1986年までに、その使用する部品と労働力の少なくとも70%をアメリカ国内で調達せねばならない。アメリカの大メーカーは90%要件を満たさねばならない。
結果的には、この法案はアメリカ市場に輸入される自動車の大量販売を事実上、禁止する効果を持つことになろう。しかし、この法案からは、現在失業に悩む自動車産業労働者を救済する当面の対策は何も生まれてはこない。議会の公聴会で、この法案の支持者たちはこの法案が完全でないことを認めながらも、日本が国際貿易において「公正にふるまおう」としないことを指摘して、自分たちの法案支持を弁護した。諸外国が公正にふるまっていないという主張こそは、アメリカが過去10年間に関係してきたすべての重要な貿易紛争の基本的要因であった。ところが、歴代のワシントン政府は、このような主張が妥当かどうか検証する調査を支持しなかった。
1976年早々に、国際貿易委員会(ITC)は日本製テレビ受像機の輸入にかかわる"不公正な行為"について調査を開始した。この"不公正な行為"とは、1つは、「アメリカの産業を破壊しあるいは損害を与える目的で、日本における実際の市場価格ないし卸売価格を大幅に下まわる価格で、アメリカにテレビ受像機を輸入し、あるいは販売しようとする組織的努力」であり、もう1つは、「日本において、電気製品の価格を人為的に固定し維持するための共同行為」であった。アメリカのメーカーはすでに、ほぼ10年前から日本のメーカーはアメリカの市場でテレビ受像機を非常に安い価格でダンピングできるが、その理由はアメリカでの損失分や薄利分を国内の閉鎖的市場で高い利益をあげて埋め合わせることができるからだ、と主張してきた。
フォード政権時代に、財務省はITC調査官に財務省の関係書類の閲覧を拒否して、この調査の出鼻を挫いたのである。1977年5月、当時のカーター政権は、日本製テレビの対米輸出を規制するOMA(オーダリー・マーケティング・アグリーメント)について交渉した。それから3ヵ月後にITCは調査を打ち切った。1978年7月に政府筋が明らかにしたところによれば、OMA協定を締結したとき、政府は日本政府に書簡を送り、ITCのテレビ・ダンピング調査はこれを打ち切るよう"勧告する"旨を約していたのである。
しばらく前からアメリカの鉄鋼会社が主張してきているところによれば、ヨーロッパの鉄鋼メーカーは採算のとれない製鉄所の雇用を維持する目的で政府補助金を受け、それにより生産コストをはるかに下まわる価格で製品をアメリカに輸出し、不公正な恩恵を受けている。フォード、カーター両政権が選んだのは、この主張の理非を決定する調査を避けるか引き延ばすことであった。むしろ両政権は最低価格制ないし輸入割当制による鉄鋼輸入制限協定を結んで、国内の政治的不満をなだめようとした。
アメリカの自動車産業は日本が対米市場にダンピングしているとは非難していないし、また日本メーカーが政府から補助金を受けているともいっていない。ただアメリカで生産される自動車がアメリカ市場で日本製自動車と競争するとき、税制上、不公正なハンディを負わされていると主張している。問題をさらに悪化させているのは、日本が一方ではアメリカに対し自由貿易政策を要求しておきながら、他方で自国市場を効果的に閉鎖しているという考えが、アメリカで蔓延していることである。



