サマリー:いまや生産・販売・輸出のすべてにおいて世界最大規模に成長した中国の自動車産業。その原動力となっているのが、産業構造そのものを変革したことだ。今後、産業融合が進む中で日本の勝ち筋はどこにあるのか。

GX(グリーン・トランスフォーメーション)とDX(デジタル・トランスフォーメーション)の両面で、世界に先駆けて進化を続ける中国の自動車産業。その推進力を生み出しているのは、日米欧の自動車メーカーが築き上げてきた産業構造を根底から覆し、垣根のない産業融合によって再構築した巨大なエコシステムだ。産業構造そのもののイノベーションともいえる中国の壮大な試みから、日本が学ぶべきものは何か。『産業融合 インテリジェンスから解く分断・統合・再興』(ダイヤモンド社)を上梓したPwCコンサルティングのシンクタンク部門、PwC Intelligenceのシニアエコノミスト、薗田直孝氏と、PwCコンサルティング スマートモビリティ総合研究所のディレクター、細井裕介氏に聞いた。

なぜ中国は、世界一の自動車生産国になれたのか

――中国の自動車産業の動向が注目を集めています。薗田さんは、25年以上にわたって中国経済を見てこられたと伺っています。中国の自動車産業の現状についてお聞かせください。

薗田 中国の自動車産業は、いまや生産・販売・輸出のすべてにおいて世界最大規模に成長しています。

 中国経済が本格的な成長期に突入したのは、2001年のWTO(世界貿易機関)への加盟がきっかけです。それまで、中国の自動車生産台数はせいぜい年間数百万台でしたが、2009年に1000万台、2013年には2000万台、2023年には3000万台を突破し、2025年には3453万台と過去最高を記録(いずれも中国汽車工業協会調べ、以下同)、世界最大の自動車生産国となりました。

PwCコンサルティング
シニアエコノミスト
薗田直孝

 販売台数も2025年は3440万台と、世界2位の米国の約2倍に達しており、インドや日本を大きく引き離しています。さらに輸出台数は、2023年に過去最高の491万台を記録し、日本を追い抜いて世界最大になりました。2025年は710万台で、世界2位だった日本の417万台(日本自動車工業会調べ)を大きく上回っています。

細井 中国の自動車産業の急激な発展には目を見張るものがあります。これほど産業や市場が巨大化したのは、欧米や日本の自動車メーカーが長年かけて築き上げた“クルマの常識”から脱却し、中国が独自に構築した「モビリティ」の概念が、世界に広く受け入れられたからでしょう。

――中国発のモビリティの概念とは、どのようなものでしょうか。

細井 大きく2つの柱があります。1つはEV(電気自動車)やPHV(プラグインハイブリッド自動車)に代表されるNEV(新エネルギー自動車)を中心に展開すること。もう1つは、SDV(ソフトウェア定義車両)やAIDV(AI定義車両:AIが運転や車内体験を制御する車両)に象徴されるデジタル化の推進です。前者はGX、後者はDXという次世代モビリティの潮流に沿ったものであり、この2つのトレンドを先取りすることで、中国の自動車産業は世界をリードする存在に躍り出たといえます。