アメリカの産業界が、長年、等閑視していた製造問題に再び立ち戻り始めるに伴い、今度は、操業管理に対するトップマネジメントの新たな熱意が、戦略管理の枠を越えて先走ってしまうという危険が生じてきた。重要な点として銘記すべきなのは、生産面における技能というものは、企業にとって重要な他の資産と同様、それを競争遂行手段の支えとして活用していくためには、細心かつ明確な目的意識のもとに展開していくべきだという点である。

 すなわち製造に課せられる任務およびその最終的な目標の双方に関して、製造は、その支援すべき製品戦略と密接かつ明晰な配慮に基づいて統合されねばならない。

 国際的な製造活動においては、このレベルの統合を達成するにあたって、特別な困難に直面するので、著者たちはその主たる論点を述べるに際して、特にこれに焦点をあて、事業のあらゆるレベルにおいて、戦略の変更は、生産の役割の変更を伴わねばならないと主張する。

□ ディーア社は、ヨーロッパ市場向けに低馬力トラクターを導入するため、1956年に西ドイツ、1960年にフランスにおいて、それぞれ子会社を取得した。しかし、1960年代半ばに至るまで、同社は世界のトラクター市場での競合戦略をふまえた製造戦略のなかに、ヨーロッパの生産施設を組み込んでいなかった。こうした遅滞のつけは、ディーア社に貴重な市場占有率の喪失となって表われた。

□ ワーウィック・エレクトロニクス社は、一時期シアーズ・ローバック社に対するカラーテレビの唯一のサプライヤーであり、かつ売上げの75%近くをシアーズ社に依存していた。しかし、その後の技術の変化と価格競争の激化のなかで、ワーウィック社はごく初期のころから、良質の製品を低コストで製造することができないことが判明してきた。同社の打開策、すなわち製品の再設計と、メキシコへの生産の移転は、あまりに小規模に過ぎ、かつ遅きに失した。この結果、シアーズ社からの信頼は失われ、サプライヤーは他に求められることになった。ワーウィックの欠損は累増し、最終的には、同社のテレビ事業は、日本のメーカーであるサンヨーに売却された。

 ディーアとワーウィックが問題をかかえるに至ったのは、いずれも、製品戦略の変化が必然的に製造システムの役割にも変化をもたらすということに気づくのが遅すぎたためである。これらの役割は、コスト要件、製品の柔軟性、量的柔軟性、製品の品質、あるいは製品の整合性といった言葉で表現できるが、いずれにせよ、どのような製造政策が適切かを決定する要因である。この役割は、ときとともに変化する。したがって以下の事項を対象とする政策も当然変化しなければならない。

製造施設の立地および規模
製造プロセスの選択
各製造施設の対象範囲、もしくは垂直統合の程度
R&D組織の利用
生産システムの管理運営
技術ライセンスの供与

 本稿においてわれわれは、ハーバード・ビジネス・スクールで行なわれた研究プロジェクトの結果をふまえて、経営者が製造政策と製品戦略を緊密に調和させ得る考え方のフレームワークを示す(このプロジェクトの詳細は、右ページのかこみ記事を参照)。14、15ページに概要を示したこのフレームワークは、すべての企業に当てはまるが、われわれは、その事業に含まれているさまざまな複雑さを考慮して、とくに国際的環境のなかで活動している組織に焦点をあてた。

 ここで留意しておくべき点が4つある。

 第1に、この表に示したように、それぞれの企業の主要な製品が、それぞれ別個の製造システムを持ち、独自の生産の役割と政策を持っているものとして話を進める。これは常にというわけではないが、非常によくあるケースである。