マイクロコンピュータを利用したコンピュータ販売戦略展開シートを使えば、セールス・マネジャーは計画、実施段階での改善を図ることができる。本稿の著者は、("ユーザー志向"のソフトウェアについて述べているが、このソフトウェアは、販売計画担当者が、潜在的顧客の顕在化したときの販売予測を即時に作成し、顧客管理の様々な考え方を試すのに役立つものである。

 さらにマイクロコンピュータは、販売員に対して時間管理改善方法を視覚的に示すことによって、教育・訓練手段として使うこともできる。営業所マネジャーや販売員は、支社や本社からのデータをみることができ、したがってトップマネジメントのめざすゴールについての情報を得ることもできる。

 セールス・マネジャーは、新規採用係(リクルーター)でもチアリーダーでもない。セールス・マネジャーは、営業担当地区(territory, district, region)を受け持つビジネス・マネジャーであり、しかも乏しい経営資源、政府の規制、収益の低下など、もろもろの問題をかかえているのである。本稿は、セールス・マネジャーが様々な局面での圧力に対処し、諸問題を克服するために、マイクロコンピュータがどのように利用されうるかを示唆しようとするものである。マイクロコンピュータは、販売戦略の企画、販売員の能力開発や評価、様々な戦略の効果の比較評価に際して、セールス・マネジャーの助けとして役立つ。

 顧客管理における一般的問題は、適正な訪問回数の決定、顧客当たりの収益の改善、資産のより効果的な使い方、配分などである。受持ち地区管理の課題には、販売コストの削減、より効果的な資産管理、時間管理についての指導、販売員の販売技術および全般的なパフォーマンスの評価が含まれる。

 こうした課題の処理にマイクロコンピュータがいかに有効であるかを示すまえに、マイクロコンピュータと簡単に入手しうるソフトウェアが、なぜ販売管理のすべてのレベルでコンピュータの能力を活用することにつながるのかを説明しておかなければならない。

マイクロコンピュータの利点

 マイクロコンピュータと安価でユーザー志向のソフトウェアの急速な発展によって、ハードウェアとソフトウェアの両方を含めても5000ドル以下(1983年の価格)の価格で上記のような課題に挑戦することが可能になった。しかも、ユーザーはコンピュータ・プログラマーである必要はなく、タイプの仕方を知っていることすら必要ではない。必要なものはマイクロコンピュータ、モニター・テレビ、ディスク・ドライブ装置、プリンター、そしていわゆるコンピュータ販売戦略展開シート用のプログラムですべてである(販売戦略展開シートの形式についてはを参照)。

コンピュータ販売戦略展開シート

コンピュータ販売戦略展開シートは、マイクロコンピュータによる意思決定支援システム(DSS)として最も多く使われているものである。Visicalcプログラムは、コンピュータ販売戦略展開シートに最も広く使われているプログラムである。SuperCalcは、多くのマイクロコンピュータに利用可能である。Multiplanは、ソーティング機能をもつ。

Micro-DSS/FINANCEは、最も複雑なマイクロコンピュータ用DSSプログラムである。

VisiCalcは、32Kのメモリーとディスク・ドライブ1台をもつコンピュータが必要である。VisiCalcがコンピュータに読み込まれると、番号をうった行とアルファベット順の列が表われる。テンプレートのかげをつけた部分に示されているとおりである。ユーザーはシートのタイトル、数式、数字を埋めていく。数式の場合は、シートの他の部分のデータを読ませることができ、「もしこうであったら」という仮定の計画作成が容易になる。1つの数値が変更されると、関連するすべての数値が計算しなおされる。

ユーザー、本社スタッフやコンサルタントは、意思決定者のニーズを満たすための分析用テンプレートを作成することができる。このテンプレートは、完成すればディスクに保存され、誰でも使うことができる。

ユーザーは空欄にデータを入力する。コンピュータは数式を用いて他の欄をうめる。

*VisiCalcは、カリフォルニア州サンノゼのVisiCorp社の登録商標。SuperCalcは、カリフォルニア州サンタクララのSorcium社の登録商標。Multiplanは、ワシントン州ベレビューのMicrosoft社の登録商標。Micro-DSS/FINANCEは、マサチューセッツ州リーディングのAddison-Wesley出版社の登録商標。マイクロコンピュータ用DSSの比較については、以下の文献を参照。

"Financial Modeling Software: Tools for the Overworked Manager," Personal Computing, 1981年6月号22ページ; Robert L. Perry, "Crystal-Balling on Micros," Computer Decisions, 1981年9月号64ページ; J. Stanton and J. Dickey, eds, The Addison. Wesley Book of Apple Computer Software, 1982年 (Reading, Mass.; Addison-Wesley, 1981年) ; Robert R. Mueller, "Business Planning Software, " Personal Computing, 1982年11月号115ページ。

編集部注:下のシートはコンピュータでアウトプットされたものなので、そのまま掲載した。シートの左右、下にある日本語は、シート中の原語の訳を示す(以下同じ)。

 本稿で使っている例は、すべてVisiCalcでプログラムされたものである。このVisiCalcは、マイクロコンピュータを使った販売戦略展開シート用のプログラムとして最も多く使われている。Visicalcは、SuperCalcやMultiplanなどの同種のプログラム言語と同様、ユーザーがラベル指定することのできる行と列を有している(1)。ユーザーはまた、数式を入れて表上の数値を操作することができる。ユーザーが表上の1数値を変えれば、それに関連するすべての数値がプログラムによって自動的に変更されるのである(図の例を参照)。

 このようなコンピュータ販売戦略展開シートを利用すれば、計画モデルの作成を迅速に行なうことができる。このモデルをディスクに保存しておけば、いつでも使うことができる。なぜならディスクは簡単にコピーすることができ、各地区マネジャーは、担当地区の管理に適切なモデルが保存されているディスクを使うことができるからである。未使用ディスクは約3ドルである。

 総括セールス・マネジャーは、管轄のマネジャーたちに、各地区共通の販売管理上の問題についての標準化された分析手法を保存している"テンプレート"ディスクを使わせることによって、より優れた戦略の立案を促すための手だてとすることができる(このような標準化された分析モデルは、基本戦略展開シートに重ね合わせる形をとるために、テンプレートと呼ばれる)。